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 かなり先回りして、局後の様子を少しだけ紹介しておこう。

 終局は午後9時12分。本局の解説を引き受けてくれた大矢浩一九段が検討に加わろうと対局室に入ってきた。山下と坂井の様子から異変を感じ取ったようだ。記録係から棋譜を借り、見入ること数秒。「ええっ!」と大きな声を上げた。記者室で出されていた結論とは反対の結果になっていたのだ。

 原因は一手ばったりのポカ。対局開始の午前10時からおよそ11時間後の出来事は、それまでの構想、工夫、苦心を台無しにした。悲劇というほかない。

 先番の坂井は黒1、3から5の構えを選択。山下は2分ほどの考慮で左下白6へ向かった。黒5と同じく位を高く保ったシマリだ。実はこの日、二間高ジマリは大人気。中央を強く意識した碁があちこちで見られた。

 昨年末、ネット対局に突如現れ、世界のトッププロを相手に60戦無敗の成績を残した「マスター」の影響だ。この構えで勝ちまくった謎の棋士は、のちに昨春の韓国・李世乭九段との五番勝負を制した人工知能「アルファ碁」の進化版だったことが判明した。

 坂井は黒11から15と右下を意識し、17とガッチリ備える。

 大矢「棋風の現れる場面です。私なら黒17はAと構えます」

 白18もマスター流。カタツキがお気に入りだそうだ。

(松浦孝仁)

 消費 黒:23分 白:18分 (持時間各5時間)

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