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 対局前の所作は人それぞれとはいえ、座椅子の位置を調整したり、ポットからお茶を注いだりと、だいたい決まっている。目を閉じて心を落ち着かせる棋士も多い。

 2月2日、日本棋院中部総本部「祥雲の間」。開始15分前に着席した坂井は盤を拭き清めたあと、研究会の宿題であろう詰碁のプリントをながめ始めた。対局前に碁の勉強をする姿は珍しい。5分たって羽根が上座に着くと、坂井はプリントを内ポケットにしまった。

 43歳の坂井と40歳の羽根。リーグ在籍年長者どうしの対戦は、こうして始まった。

 黒は1、3、5と、星と大ゲイマジマリの構え。対して白6の割り打ちは「羽根さんがよく打ちます。決めているのでしょう」と、解説の小県真樹九段。

 黒7のカカリに白は8と緩く臨む。黒9のハサミに白10、12と頭を出す進行は実戦例が多い。12でAとコスミツけて治まろうとするのは、黒21で黒を固める。白は14とハサんで16と高く構え、下辺黒への攻めをみた。

 黒も17、19と左辺にもたれて左下の白をにらむ。

 白20のツケに黒が21とノビて応じたのが午前11時少し前。羽根の手がぴたりと止まった。ため息をつき、「あいたた、あまりにも情けないな」とつぶやく。長考は昼休みをまたいで続いた。

(内藤由起子)

 消費 黒:20分 白:35分 (持時間各5時間)

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