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 昨年11月の王座戦五番勝負に続き、3月7日から始まった十段戦でも井山裕太に挑戦している余正麒。今年に入っても、本局までに6勝1敗と好調をキープしている。ところが名人戦リーグでは、いまだに勝ち星がない。元名人の山下敬吾は難敵であるが、対戦成績は3勝4敗と伯仲しており、直近は2連勝。この勢いで、リーグ初勝利をつかみたいところだろう。

 2月16日。東京は寒さが小休止し、暖かな陽気だった。

 白2を打ってすぐ、余はスーツの上着を脱ぎ扇子を手にした。黒3の小目から5の二間はAIの影響で最近の流行だが、「この方向のシマリは、黒では珍しい。白ならありますが」と解説の金秀俊八段。二間なら黒A、Bの構えが多いという。

 山下は意欲的な作戦を用意していた。黒7のカカリ一本から9と一間にシマり、白10のハサミに黒11と肩をつき13とトンだのだ。「軽く打とうというのでしょうが、リスクが高く、たいていのプロは怖いと思います」と金解説者。ここから黒は一手一手が難しくなる。

 白14に黒16とノビるのは重い発想で、白C以下符号順に白Gと切られ、とても戦えない。そこで黒15とハネたのだが、白16のハネ返しに山下の手が止まった。

 23分を投じて黒17とカケツいだが、これが最初の後悔になった。

(内藤由起子)

 消費 黒:37分 白:31分 (持時間各5時間)

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