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 記者はこれまでに、数局の指導碁経験がある。普段の対局ならとことん勝負にこだわるが、相手が棋士になると世俗的な感情は浮かんでこなくなる。勝っても負けても、いつも局後に思い知らされるからだ。同じルールで碁を打っていたのだろうかと。そして、これも決まっていい経験をしたとかなり得をした気分になる。

 盤上は創意工夫に満ち、指導碁の時と同じく棋士のすごみを感じた。当然と言われればそれまでだが、見ているところがまったく違う。正直、ショックでもあった。

 黒1、3、5の布陣に白6と黒の勢力圏の右辺からカカるのは珍しくなくなった。白8のツケは現在の一番人気かもしれない。

 「足早な展開を白は目指しています。黒9では15、白16、黒Aが坂井さんの注文でしょう。白はBかCに構えることになります」と解説の片岡聡九段。

 黒9がおもしろい。右辺の白に楽をさせないとの宣言に映る。ところがだ。実に不思議な経緯をたどる。

 坂井は白10から14と、右上の一団の補強を優先した。こうなれば黒は右下の白に襲いかかるのが、黒9に割って入ったそもそもの目的のはずだ。

 黄は黒15から21まであっさり形を決める。白22を待っての攻撃開始と記者は踏んでいた。この予想、ものの見事に外れることになる。

(松浦孝仁)

 消費 黒:31分 白:32分 (持時間各5時間)

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