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 対局中に理屈では説明できない現象を経験したことが、皆さんにはあるだろうか。盤上のミステリー。季節外れで少々大げさかもしれないが、ご容赦を。

 8月3日に行われた最終一斉対局の3戦目を紹介する。河野は本局を落とすとリーグ落ちの可能性があった。同星の余正麒が井山裕太に敗れたため、序列上位の河野は自動的に残留が確定。もっとも対局開始の時点では、勝つしかないと誓って盤に向かっていたと想像する。

 河野の緊迫感を陥落が決まっている坂井はやり過ごすことなく受け止めた。左下、黒7の大斜ガケに、記者はそんな印象を受けた。そしてこれがミステリーの発端となる。

 オールドファンは白16までの進行にほっとしているのではないか。大斜定石の代表的な手順だ。最近は人工知能が打ち出した、黒9で14、白13、黒11を見るケースが多い。

 黒17の押しを迎えたところで坂井に不思議な現象が。続く白18のマゲを予感していたというから驚く。

 「記録が残っている範囲では数局しか前例がありません。しかも五十数年ぶりの白18です」と、解説の大矢浩一九段。なぜ新手と言ってもいい白18を予想できたのか。実は坂井の幼少時代の思い出が影響していたらしい。当の河野は「中国の対局サイトで一度だけ見かけた」とのことだ。

(松浦孝仁)

 消費 黒:14分 白:18分 (持時間各5時間)

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