[PR]

 「分からないことばかりです」

 第3局を表すには、解説を引き受けてくれた張栩九段のこの言葉がピッタリだと思う。序盤から終盤まで、何度このフレーズが聞かれたことか。

 両者1勝1敗で迎えた七番勝負序盤の山場は、高松市の旅館「喜代美山荘 花樹海」が舞台。香川県で名人戦挑戦手合が行われるのは初めてだ。意外というほかない。約220人のファンで埋め尽くされた前夜祭の様子から察するに、囲碁熱は相当なものだ。今期は続く第4局の石川県も初開催となる。

 9月21日、立会人の坂口隆三九段が落ち着いた口調で定刻の午前9時を告げる。先番の井山挑戦者が右上隅へ左腕を伸ばし、長い戦いが始まった。

 黒11まで進んだ時だ。張解説者が「もう分かんないです(笑)」と、本気とも冗談ともつかぬ一言を発した。下辺黒9の展開に白10と構えるのは、白8と共にゆっくりいこうとの意思表示でそれほど珍しくはない。ただ、左下をそのままに右上が黒11から15できな臭くなったことが、見通しを複雑にしている。当日の張は、いやこの日に限らず彼の視点は鋭い。白16と高尾名人がひねった一着を放った直後だ。こう予言した。「険しくなりそうですね。コウが始まるかもしれません」。コウも、本局を表す格好のキーワードとなる。

(松浦孝仁)

 消費 黒:48分 白:34分 (持時間各8時間)

[ 次の譜へ ]