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 4分間、じっと考えた高尾紳路名人が頭を下げ、アゲハマをひとつ盤上に置いた。

 どどどどと地鳴りのような足音とともに、報道陣が次々対局室になだれ込んできた。何台ものカメラのシャッター音とフラッシュを浴びながら、淡々と検討する両対局者。

 8年前、井山裕太が史上最年少の20歳で名人を取ったのも、「あたみ石亭」の同じ部屋だった。その瞬間の情景と重なった。

 ご存じのとおり、井山が名人位を奪還し、再び七大タイトルを独占した。七冠達成は1度でもたいへんな偉業なのに、2度目とは、囲碁界はもちろん将棋界を含めても初めてのことだ。

 井山が名人復位を決めた熱戦を振り返っていこう。

 10月16日。気温がぐっと下がり、秋が深まった静岡県熱海市は、朝からしとしとと雨が降っていた。

 挑戦者は黒1、3、5と高中国流で臨む。報道陣が退出すると、ふたりはすぐに上着を脱ぎ、態勢を整えた。

 白10までは両者が2年半前、棋戦優勝者選手権決勝で打ったのと全く同じ進行だ。そのとき勝った挑戦者のほうが、黒11と変化した。

 白12のハサミに「手を抜いて黒Aと、広い左辺に向かう実戦はよく見ます」と、解説の秋山次郎九段。17分考え、挑戦者は黒13とツケていった。

(内藤由起子)

 消費 黒:24分 白:13分 (持時間各8時間)

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