写真名人 高尾紳路(40)

写真挑戦者 井山裕太(28)

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表名人戦七番勝負の歴史(クリックすると拡大します)

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 高尾紳路名人に井山裕太六冠が挑戦する第42期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)が30日、開幕する。昨年の名人戦に敗れ七大タイトル独占が崩れた井山挑戦者は、残る6タイトル防衛、挑戦者決定リーグ戦全勝の驚異的な戦績をひっさげ、再びこの舞台に戻ってきた。名人の連覇か、挑戦者の前人未到の七冠復帰か。3期連続となる黄金カードに注目が集まる。

■打ち方変え 違う戦い見せる/名人 高尾紳路(40)

 予想通り、一番強い人が出てきました。怖さもありますが、あれだけ強い人と七番勝負を打てるのは幸せなこと。ひと握りの棋士しか経験できないことを喜びと感じながら対局したい。

 去年の名人戦でたまたま僕が勝ったあと、井山さんの調子が落ちるかなと淡い期待を抱いていたのですが、感心するやらあきれるやら、素晴らしい棋譜を残しています。昔からほとんど弱点がありませんでしたが、自滅というか、あまりに強すぎて自分自身の力を制御できない面はあったように思います。それがすっかり影を潜めました。

 僕のほうはといえば、最近上り調子で、去年の名人戦と同じぐらいの調子でいけるかな。でも相手はさらに強くなっているので、このままでは厳しい。だから打ち方を大きく変えます。台頭著しいAI(人工知能)の考え方を取り入れます。今までとは違う戦いをお見せできると思います。

 皆さんは井山さんが勝つと見ていると思いますが、去年の僕が証明したように、勝負ごとは何が起こるかわかりません。実力は一枚も二枚も向こうが上ですが、僕は、そういう強い人に向かっていくほうが良い結果が出るタイプ。負けてもともと、思い切りぶつかるだけです。

 去年の七番勝負は忘れられない戦いになりました。特に第7局は今までの棋士人生で一番うまく打てた。技術的にも精神的にも、あのときの盤に向かった気持ちを思い出して、自分を信用して打ちたい。相手も強いが自分も強いんだという気持ちで、一手一手積み重ねていきたい。

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 たかお・しんじ 千葉市出身。アマの故田岡敬一氏に師事、故藤沢秀行名誉棋聖門下。1991年入段、2005年九段。96年の新人王戦優勝で初タイトル。05~07年本因坊3連覇。06年には名人戦を制し名人本因坊に。名人戦は10年と15年、当時の井山名人に挑戦するも敗れたが、16年に4勝3敗で下し、七冠独占を崩すとともに10期ぶり名人復位を果たした。日本棋院東京本院所属。

■再びの七冠へ 気負いはない/挑戦者 井山裕太(28)

 もう一度七冠という気持ちはそんなになかったんですが、一つ一つの積み重ねでここまで来られた。自分自身、想像もしていませんでした。2度目の七冠となると、将棋の羽生善治先生も達成できていないことなので、そこに挑戦できるのは誇りに思います。

 昨年は七冠になり本因坊、碁聖と防衛して名人戦を迎え、精神的に余裕がありませんでした。今はちょっと違う。気負いはありません。

 名人を失って肩の荷が下りたというか、一度リセットして純粋に碁に向き合おうという気持ちになれました。以前より決断よく、妥協なく打てています。全体的に精度が上がってきた。ミスはあるが大きなミスは減っている。棋士人生の中で一番いい状態です。七冠だった去年の自分よりも自信があります。

 高尾さんは手厚い棋風といわれますが、スピードも意識したオールラウンダーです。自然な手を積み重ね、難しい手を自ら選択してくるタイプではない。昨年負けた4局は、自滅とみられても仕方がないような負けが続きましたが、そうさせられた面があります。あのときの高尾さんはこれまでで一番強いと感じました。今年もきっちり仕上げてこられるでしょう。さらに大変になっているという気持ちで臨みます。

 名人戦は自分の原点です。初めて挑戦した七大タイトルが名人戦で、初めて得たビッグタイトルも名人戦。たくさん負けもしましたが、成長させてもらった。その舞台でまた戦えることがうれしい。持てる力を出し切るだけです。

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 いやま・ゆうた 大阪府東大阪市出身。石井邦生九段門下。2002年入段、09年九段。05年、16歳4カ月の史上最年少で一般棋戦優勝。09年、七大タイトル戦史上最年少の20歳4カ月で名人に。16年4月、史上初の七冠独占(名人、棋聖、本因坊、王座、天元、碁聖、十段)。同11月に名人を失ったが、残る六冠をすべて防衛し17年、名人戦リーグを8戦全勝で挑戦権獲得。七冠復帰をめざす。日本棋院関西総本部所属。

■対局日程

第1局 8月30、31日 大阪市北区「コンラッド大阪」
第2局 9月12、13日 東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
第3局 9月21、22日 高松市「喜代美山荘 花樹海」
第4局 10月2、3日 石川県小松市「旅亭懐石のとや」
第5局 10月16、17日 静岡県熱海市「あたみ石亭」
第6局 10月23、24日 甲府市「常磐ホテル」
第7局 11月1、2日 静岡県河津町「今井荘」

※対局は持ち時間各8時間の2日制。一方が4勝した時点で第42期名人が決まり、それ以降の対局は打たれない。

◇取材・構成は大出公二、撮影は山本和生、迫和義が担当しました。