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 先に損はしない。ほぼすべての棋士に備わっている意識だ。勝負の世界では、目の前の「現ナマ」を優先したほうが勝ちやすいと捉えられている。

 だが、本局の黄は気合を重んじ、先に損をした。言い換えれば先行投資なのだが……。右辺で黒に好形を与えたのがそれだ。代償として上辺の黒にきつい攻めがあればいいが、黒27の押さえで弾力豊か。いざとなれば黒Aで簡単に生きだ。

 白の進むべき道は一つ。白28から黒に寄り付き、何らかの利益を上げるしかない。

 黒29への応手が悩ましいところだった。

 瀬戸「参考図の白1とハネるのが常識。しかし、隅を補強する黒2、4がaとbに断点を残してピッタリです。白5と黒に迫って傷をぼかそうとしても、黒6から10が狙いの筋。黒12となれば白の攻めは空振りです」

 黄は白30と右辺を守り、黒31には白32、34で白Bを浮かび上がらせた。高尾は黒35のハネ一本で緩和し、黒37に向かう。どうも黒の勢いがいい。白は先行投資分を回収できていない。

(松浦孝仁)

 消費 黒:51分 白:1時間35分 (持時間各5時間)

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