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 うわさ通りの静かな開局だった。18歳1カ月の右手がすっと伸び、第一着が打たれた。気合を込めたというよりは、そっと置く感じ。ほとんど音がしないから、打ち下ろしたとは書きにくい。

 2017年の公式戦最終日となった12月21日、芝野虎丸は大阪の関西棋院で村川大介と対戦した。旧名人戦を含めて半世紀を超えるリーグ戦史上、もっとも若い棋士のデビュー戦である。

 芝野は棋士になってまだ3年余り。そっと打つのは緊張からではなく普段どおりの所作という。小柄で静かな居ずまいの若武者はこの年、大ブレークした。それについては後日、改めて紹介する。

 村川は長身の27歳。少しふっくらとして見えるのは芝野との対比からか、あるいは棋士生活15年を過ぎた風格からか。連続6期目の名人戦リーグ。1歳年上の井山裕太名人との七番勝負を待ち望むファンは多い。注目の若手との大事なリーグ初戦だった。

 白8、10のツケ切りは定石だが、あまり見ない変化だ。黒11と引き、白12のカケには黒Aとノビるのが形だったような……記者が記憶を呼び覚ますよりも早く、芝野が黒13とアテる。

 正座を崩した村川がぐっと腕組みをした。

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 今期から名人戦の観戦記を担当します。どうぞよろしくお願いします。

(琴棋庵)

 消費 黒:9分 白:14分 (持時間各5時間)

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