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 張は抜群の勝負勘で余に迫る。「普通にヨセれば黒が盤面10目は確実に残しています。白40の切りは勝負手です」と林解説者。

 大石の眼形を脅かされた黒は41、43の手筋から眼形を確保する。ただしその前に黒48、白52を決めれば、地と眼形の両面で少し得だった。すかさず白48にまわったのが機敏だ。

 終盤にさしかかり、右下白56に余は黒57とツケる二眼生きに甘んじた。黒58と切るのはわずかに強襲されるおそれがある。結局▲で59を選ぶべきだったことになるが、選択ミスとは書きづらい。残留争いで崖っぷちにいる余の心は揺れていた。

 依然として黒優勢。午後5時半、黒63まで進んだところで夕食休憩のブザーが鳴る。すっと立ち上がり、すばやく対局室を出た張からは、勝負にかける思いが感じられた。まだあきらめていない。

 再開後、張がネクタイを外して現れた。きちょうめんな張には珍しい所作だ。蒸し暑い夜だったが、燃える心がそうさせたか。

 張にも葛藤があった。あきらめの気持ちが白84を打たせ、この瞬間、余に勝利の振り子が大きくふれた。黒87と外側で受けていれば白85、黒A、白B、黒Cで白に脈はなく、張の投了も近かった。

 右辺に25目の白地をつくれば細碁に持ち込めるという。戦う気持ちを取り戻した張は、白92、94と挑んだ。

(琴棋庵)

 消費 黒:3時間23分 白:4時間13分 (持時間各5時間)

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