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 井山裕太に挑戦して名人位を奪取した棋士は、高尾紳路と山下敬吾だけだ。その両者が挑戦者争いに絡まないとだれが予想しただろう。今や残留も危うい高尾にとって負けられない一戦だ。

 黒3の小目から5とカカったとき、「白Aとカカり返し、黒が22と両ガカリする布石が、AIの影響で大流行しています」と解説の蘇耀国九段。独自の道をゆく山下は白6と受け、黒7の構えをゆるした。

 今年の高尾は不調だ。本局まで7勝10敗と負け越している。高尾が導入しているAIを使った研究が原因のひとつではないかと、蘇解説者は推測する。

 「AIの発想は、人間が長年積み上げてきた感覚からするとなかなかなじめず、採り入れようとすると感覚が邪魔になります。だからといって感覚を放棄すると、これまで培ってきた自分らしさを失うジレンマが起きます」。AIに影響され自分を見失い、スランプに陥るベテラン棋士は少なくないという。AIとどう向き合うべきか。棋士の課題として浮上している。

 白10のハサミからさっそく競り合いが始まる。黒15の三々入りから23となったとき、白24の出を決めるのは、ふつうは悪手だが、この局面では場合の好手だった。

 「白24をうっかりした。ひどかった」と高尾が嘆いたわけは次譜で。

(内藤由起子)

 消費 黒:24分 白:23分 (持時間各5時間)

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