[PR]

 前期七番勝負の第3局、香川・高松の対局に張は新聞解説として同行した。観戦記者の私はそこで彼がもらした「弱音」をはっきり覚えている。

 「ぼくの意見なんて、誰も聞いてくれないんじゃないですか」

 急速に進化した人工知能に対しての危機感を正直に口にした。碁に関しては強気な姿勢で知られる張。五冠王だった頃を知っているからこそ、私はショックだった。大舞台に戻るには時間がかかる。そう感じた。

 あれから10カ月。強く、たくましくなった張が目の前にいた。7月19日、本局に勝って井山裕太名人への挑戦権をつかみ取った。終局後、インタビューに答える彼を見て確信した。あれは弱気だったのではない。強烈な負けず嫌いの性格の発露だったのだと。

 両者ほとんど時間を使わず黒11まで進む。右上白12、14のツケ二段は流行型だ。黒15、17に白18なら黒Aとサガるのが常識とされてきたが、現在は黒19のマゲを決めるケースが増えてきた。

 「この碁では特に黒19、白20を交換したい。黒19をAは白19と押されて感触がよくありません。中央を意識した右下とのバランスがいまひとつです」と解説の平田智也七段。

 黒21に白は22と突入し、険しくなった。ただし、対局者の意識は右辺だけではなく、Bの好点にも当然向けられている。

(松浦孝仁)

 消費 黒:6分 白:11分 (持時間各5時間)

[ 次の譜へ ]