長く苦しい時間が続いた黄に、ようやくチャンスが巡ってきた。残り時間が切迫している中、黒5の強打を繰り出した。結果論かもしれないが、白は黙って12へツイでおくのがまさった。白6と反発した実戦は、黒7から9の切りが強烈。張に誤算があった。
平田「白10、12のあと参考図の黒1を想定していたようです。白2からシボリの態勢につき、aのところのコウ争いになります」
コウは張の十八番。確かにこうなれば白ペースに映る。
何もせず、黒13とじっとノビたのが冷静だった。やむなく白18まで渡ったが黒19と生きられ、左辺に白地はほとんどできていない。白4は小さなところを打った理屈だ。
張の立て直しは早かった。17分の考慮で白22へ。このツケを「自慢の一手でした」と局後、私に打ち明けてくれた。黒のダメヅマリを追及し、中央の白地化を目指している。
こういう強気な発言を聞けば聞くほど、彼の復調は確かなものと思えてくる。以下の進行をぜひ確認して欲しい。黒が33まで二眼を確保する間に、上辺がふっくらしてきた。
今度は白34と右辺の黒に寄りついていく。
(松浦孝仁)
消費 黒:4時間55分 白:2時間21分 (持時間各5時間)
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