【白4目半勝ち】271手完

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 11月2日午後6時34分に終局。勝敗が決した右辺のコウが始まってから約1時間が経過していた。井山裕太は名人位を明け渡すという現実を受け止めながら、最善と信じた着手を重ねていた。

 10年前を思い出す。19歳の井山が当時の張栩名人に挑戦し、最終局で敗れた第33期。まさにあのときの再現だ。本局と同じく立会人を務めた淡路修三九段が、終盤、感極まったようにつぶやいた。

 「苦しい碁は早く終わらせて楽になりたいものなのに……。そうだよね、井山くんみたいに、どんな時でも棋士は悩まなくちゃいけないんだよね」

 翌年リベンジを果たせたのは、この姿勢が少なからず影響していたと思う。

 名人復位を果たした張は局後、記者会見に臨んだ。中継で笑いを取る場面を見た夫人の小林泉美六段は「びっくりした」そうだ。確かに朗らかになった。本人は「昔はタイトル保持者、第一人者としての重圧があった。(無冠になって)そういうものがなくなっただけですよ」とはにかんだ。

 2人の決戦、次が待ち遠しい。

(松浦孝仁)

 消費 黒:7時間58分 白:7時間1分 (持時間各8時間)