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 孫の早打ちは棋士の間で有名だ。私も話には聞いていたが、第2局で目の当たりにして驚いた。観戦記で「ノータイム」というのは、消費時間が記録されない1分未満で打った場合をいう。しかし孫は、まさに間髪いれず着手していた。

 芝野も負けず劣らずの早打ちだ。本局は猛烈なスピード進行になると覚悟していた。

 孫は黒5、7とカカりっぱなしで9とシマる走った布石。芝野は白10のAI流ダイレクト三々で対抗する。「黒23まで、実戦例の多い進行です」と解説の一力遼八段。

 白24のハサミに孫は8分考え、黒25と高くハサみ返した。低いAだと、白26に黒Bとトブことになり、白に左上へ先着される。孫は黒27のトビを急いだ。

 白28に黒29、31で間に合わせ、大上段に黒33とカケ、35とタタいた。「積極的な作戦ですが、打ち過ぎだったかもしれません」と一力解説者。白36と切られると、黒のいい変化がなかなか見えないのだ。孫も局後、「やり過ぎだった」。黒33でCの肩つきなら穏やかだった。

 孫はしきりに右手首を気にしていた。黒33を打つと対局室を出て、戻ると大きなばんそうこうが貼られていた。「前日に転んでけがをして。きょうになって傷口からまた出血して、ズボンも汚れてしまって」と、局後に打ち明けた。

(内藤由起子)

 消費 黒:32分 白:19分 (持時間各5時間)

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