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 名人の着手に勢いがついたところで1日目は終わった。挑戦者はどんな心境で夜を過ごすのか。気になって仕方がなかった。初めて2日制の七番勝負に臨んでいる19歳。第1局は好局を落とし、本局も現状は芳しくない。悔しさ、不安、後悔。そんな目に見えないトゲのようなものは、時に増幅して人を惑わす。ましてここは異国の地だ。自分自身を見失ってもおかしくない。

 2日目。挑戦者に変化はなかった。姿勢よく盤に向かっている。

 名人は封じ手の白20から22と、右辺を囲わせて打つ戦略を採用。狙いは左辺の黒だ。白28の切り込みは手筋。黒Aと換わり、白BとCの利きを確保しようとしている。

 黒29の反発が強烈だった。「名人は予想外だったのでは?」と平田解説者。白30ではC、黒D、白E、黒A、白Fが目につく。黒が隅に手を入れれば白は左辺黒の攻めに向かい、一応白28の顔は立つ。しかし、白Fには黒Gの抵抗がある。白Hに黒Iが成立。種石を取られて隅の味がなくなるのは耐えられない。

 名人は白30から34と攻めの態勢を構築。白C以下の隅の味はもちろん含みにしている。

 ここで挑戦者、再び強手を繰り出す。そして勝利へ一直線に進んでいくことになる。実は前の晩、彼は11時間も睡眠をとった。化け物のような精神力ではないか。

(松浦孝仁)

 消費 黒:4時間36分 白:5時間23分 (持時間各8時間)

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