[PR]

 一力遼と本木克弥が幽玄の間で相対した4月12日、ゴルフの松山英樹選手によるマスターズ・トーナメント優勝の吉報が届いた。海外勢の天下が続く囲碁で世界一をめざす一力にとって、相当な刺激となったはずだ。

 守りの姿勢で一番になれないのはゴルフと同じだ。首位を走る名人戦リーグで大胆な発想を見せた。

 「白2の小目はちょっとした注文をつけています」と解説の孫喆七段。タスキの黒3を誘っているという。次に黒5のカカリが好ましいが、それが相手の注文となれば迷う。本木は注文に乗った。

 一力の大胆な発想は黒15とハサまれた場面で飛び出た。白16と三間にトンだのだ。「おおっ」。記者室から驚きの声が上がった。

 「一間トビ」「二間トビ」はあっても「三間トビ」という囲碁用語は寡聞にして知らない。「初めて打ちました。思いつきです」と一力。「実戦例はありませんが、試してみようかなと」

 孫解説者「実戦のように二間バサミの応手に、AIの第1候補が三間トビだったのを見たことがあります。AIの前に気づく人がいたら、よほどの天才です」。黒Aと分断に来れば白Bのツケから治まる。黒Aの急所にある白16は活力十分。これを拠点にCと肩を突く形もある。本木は黒19、白20と換わって見慣れた形に戻した。

(内藤由起子)

 消費 黒:36分 白:12分 (持時間各5時間)

[ 次の譜へ ]