2009年9月17日
多くのファンが大盤解説会を楽しんだ=熊本市のホテル日航熊本
封じ手が記された用紙
封じ手が書かれた紙を張名人(左)に示す立会人の武宮正樹九段=17日午前、熊本市のホテル日航熊本
●挑戦者が勝ち、タイに
第34期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第2局は17日、熊本市のホテル日航熊本で2日目が打ち継がれ、午後7時8分、挑戦者の井山裕太八段(20)が張栩(ちょう・う)名人(29)に255手までで黒番中押し勝ちした。残り時間は井山挑戦者が3分、張名人が1分。第3局は24、25の両日、兵庫県宝塚市で。
●コウ争いが収束
50手以上に渡って争われた右下のコウが黒187で収束した。右下白の大石の生死がからむ、白に負担の大きいコウだったが、名人は挑戦者のコウダテにすべて応じて、コウを争いつづけた。結果、右下は黒白、双方が生きる平和的な解決となり、検討陣からは「早期の終局はなくなった」という声。挑戦者が逃げ切るか、名人が追い込めるか。
●挑戦者、優勢に
黒105以下の手段が厳しく、形勢は挑戦者に傾いたようだ。黒115とアテられた名人は右下白116、118の出切りで対抗するものの、白120のツギに黒121のブツカリが冷静で困っている。挑戦者は黒125と白三子を取り、127と出て優勢に立った。名人は右下白132のコウで追い上げを狙うが、黒はコウに強い碁形のため、白の逆転は難しいとみられている。
●右辺の戦い、激化
昼の休憩再開後、挑戦者は慎重に読みを入れて黒95とコウを取った。名人の白96は、右辺の黒の連絡を阻止した手。検討室では、ここで黒が103に打ち抜き、白に右辺を献上する変化も研究されていたが、挑戦者は黒97、99と頑張って、右辺を捨てない方針をとった。名人が白100と中央への出口をふさぐと、挑戦者は黒105、107から逆襲に出る。黒111に白112とツケコして、戦いは激しくなるばかりだ。
ホテルでは午後2時から大盤解説会が始まった。平日にもかかわらず、既に約140人が集まっている。
解説は溝上八段、聞き手は稲葉禄子アマのコンビ。溝上八段はこの進展を見て「部分的には終盤戦。一気に終局する可能性もありますが、長くなる気がします」と説明。稲葉アマが「ファンの皆さんは夕食までに帰れそうですか」と尋ねると、溝上八段は「帰れないと思います」と答え、場内に笑いが起きた。
●ファン、指導碁を楽しむ
対局が行われているホテル日航熊本では、溝上知親八段や久保秀夫六段、宮崎龍太郎六段らによる指導碁があった。棋士は一度に4、5人のアマを相手にしながら、それぞれの手を解説。ファンらは、プロの指摘に大きくうなずきながら聴き入っていた。
鹿児島県薩摩川内市から来た瀬戸口秀雄さん(73)は7子でプロに勝利。「欲張らず控える手を学んだ。勉強になりました」と笑顔だった。
●対局再開
午後1時、対局が再開された。挑戦者は前傾姿勢になって考えている。
●昼食休憩に
正午になり、挑戦者が95手目を考慮中に昼食休憩に入った。持ち時間各8時間のうち消費時間は井山挑戦者5時間43分、張名人4時間52分。
●コウ含みの競り合いに
名人は右上の一団を中央へ進出させるように白80へボウシした。このラインを黒に止められてはたまらない。同時に上辺と右辺の黒を両にらみにした手でもある。対する挑戦者も黒81と割って出て、あわよくば右上、右下の白を攻めようという態度をみせる。
中盤の難所ともいえる攻防。名人が白82に38分を費やすなど、両者、一手一手に時間をかけた読み合いになっている。
右辺一帯の攻防は収束へ向かうと思われたが、白88のツケに、挑戦者が黒89、91と反発して、コウ含みの競り合いへと発展した。
●2日目、対局再開
張栩(ちょう・う)名人(29)が挑戦者井山裕太八段(20)に先勝して迎えた第34期囲碁名人戦七番勝負・第2局(朝日新聞社主催)の2日目が17日朝、熊本市のホテル日航熊本で始まった。2年連続、同じ顔合わせでの七番勝負。張名人は3期連続通算5期目、井山挑戦者は史上最年少での名人位獲得を目指す。
午前9時。立会人の武宮正樹九段が「時間になりましたので、始めてください」と告げ、1日目の手順が再現された。井山八段の封じ手は16の十二のオサエだった。