2009年10月7日
●○見応えのある攻防/武宮陽光の目●○
白74とカケツイで左下での戦いが一段落しました。両者見応えのある攻防でしたが、出来上がった姿を見ると、一応黒53のアテ込みが成立した形となり、白54も持ち込みになったように見えるので、やや黒がポイントを上げた印象を受けました。
白76では上辺の星の位置にヒラけば穏やかで一般的です。そこを一杯に広げたのは、名人の「頑張ろう」という意識の表れかもしれません。黒も黙ってはいられず、黒77は気合の打ち込みで戦いは上辺へと移りました。2日目も見どころの多い攻防が繰り広げられると思います。ぜひお見逃しなく。
●井山挑戦者が封じる
午後5時31分、井山挑戦者が83手目を封じて1日目が終わった。消費時間は井山挑戦者3時間31分、張名人4時間。8日午前9時に再開する。
●○厳しいアテ込み/武宮陽光の目●○
黒43の切りから戦いは左辺へと移りました。黒45のツケコシが一つの筋で、白がこれを遮ると黒に切りから白34の石を抱えられて見事なハマリの図になってしまいます。よって白はここを遮れず、黒47と突き抜かれるのはやむを得ません。
ただ黒47に対し、白は48から50と応じましたが、この手では14の上にノビる手も有力でした。これは黒53のアテ込みと下辺の白に対する防御を兼ねているからです。
実戦だと黒53の厳しいアテ込みが成立しています。白が参考図1から3と隅を頑張ると、黒12までで中の白が取られてしまいます。黒10の利きのおかげで、▲の石が白aとアテられても黒bとサガって助かっています。ただ名人も承知の上でしょうから、今後どのような変化になるのか注目したいと思います。
●○穏やかに分かれる/武宮陽光の目●○
黒23の強手に対し、すぐに遮る戦いは不利と見た名人は白24のツケから手順を尽くしてさばきにいきました。黒もそのさばきに対しまともに応じるのは無理と判断し、黒29から31と矛を収めました。白は32とカケツイでここを黒に切らせなかったこと、黒も右辺をしっかりさせたことに満足して、黒23からの戦いは穏やかに分かれました。
白36に、黒は地としては一路右にハッて頑張りたいところですが、隅の出切りからの具合が気持ち悪いと見て黒37と手厚い手を選びました。これだとこの黒地に対して、白から手段がはっきりと残ったので、白36はいいタイミングの様子見だったと思います。
●仙台の奥座敷、秋保温泉
秋保(あきう)温泉は仙台市中心部から車で約30分。「仙台の奥座敷」と称され、約20の旅館が立ち並ぶ。清流と巨岩が作る「磊々(らいらい)峡」などの景勝地が観光客の目を楽しませる。
茶寮宗園で囲碁の名人戦が打たれるのは2度目。07年の第3局では当時の高尾紳路名人に張挑戦者が挑み、300手を超える熱戦になった(張勝ち)。今回も再び激闘が繰り広げられるだろうか。
●対局再開
午後1時になり、対局が再開した。張名人が引き続き、32手目を考えている。
●昼食休憩に
正午になり、考慮中に昼食休憩に入った。消費時間は井山挑戦者1時間15分、張名人1時間45分。対局は午後1時に再開する。
●○名人の注文通りか/武宮陽光の目●○
白12のハサミから20までの進行は、黒も堂々と受けていますが、左下から下辺の白も形良くいい地ができて実利を好む名人の注文通りとも言えます。ですので、黒13のコスミでは、白14の一路右、もしくはその一路下に打ち込んでにぎやかに策動する手もあったかもしれません。
●○気づきにくい手/武宮陽光の目●○
黒23は気づきにくい手ですが、打たれてみるとハッとさせられます。白がオサえると、押し上げて切ってしまおうという厳しい手です。その瞬間、隅の黒も気持ち悪い姿なので、気づきにくいところですが、よく見てみると白からの手段もなさそうです。切られてしまうと白も大変そうなので、何かかわす手を考えなければいけないかもしれません。
●○挑戦者の高等戦術/武宮陽光の目●○
白10と低くハサんだのは少し珍しいですね。二間高にハサめば一般的ですが、ノータイムだったので、もしかしたら研究の一手だったかもしれません。これに対する黒11は柔軟な発想です。従来の発想だと黒7の左上にコスむ手しか思い浮かばない形ですが、黒11は左下での白の応手を見てから下辺の打ち方を決めようという高等戦術で、最近の碁の考え方が広くなってきたなと感じます。
●○注目の一戦/武宮陽光の目●○
おはようございます。日本棋院五段の武宮陽光です。今シリーズも4局目からネット中継を担当いたします。よろしくお願いいたします。
第3局で華々しいコウ争いを制した挑戦者が2勝1敗と一つ勝ち越してがぜん面白いシリーズになってきました。今日、明日と注目の一戦をどうぞお楽しみください。
●第4局始まる
張栩名人(29)に井山裕太八段が挑戦する第34期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)第4局が7日、仙台市太白区の茶寮宗園で始まった。井山挑戦者が2勝1敗とリードして迎えた本局。張名人がタイに戻すか、井山挑戦者が名人奪取にあと1勝と迫るか注目の一番だ。
午前9時、立会人の片岡聡九段が定刻を告げ、対局が始まった。井山挑戦者は1分弱考え、右上隅星に第一着を放つ。張名人もほどなく左上隅星と応じた。井山挑戦者は黒1、3、5の中国流の布陣を敷いた。