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結末にドラマ、再び大舞台 高尾九段が第35期名人戦挑戦権

2010年8月19日

写真名人挑戦を決めたリーグ戦最終局を振り返る高尾紳路九段=5日、東京都千代田区の日本棋院会館

表拡大第35期囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦

 「突然のことで、びっくりしている」――。5日、高尾紳路九段が井山裕太名人へ挑戦を決めた第35期囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)の最終一斉対局はドラマチックな結末だった。首位で並んでいた張栩棋聖が痛恨の逆転負け。ライバルの結果を知らずに対局中だった高尾が勝った瞬間、リーグ優勝が決定した。3年ぶりの名人戦七番勝負登場となる高尾は「またこの舞台に立てるのがうれしい」と語った。

■張棋聖は痛恨の逆転負け

 ここ3年、7月に挑戦者が決定していた名人戦リーグは、久々に注目度の高い8月の最終一斉対局を迎えた。最終戦は全4局。このうち日本棋院東京本院で打たれた張―小県真樹九段、高尾―結城聡九段の2局が挑戦者決定にからむ対局だった。

 張、高尾は6勝1敗の首位タイ。互いに譲らず7勝1敗で再び並べば、あるいは両者負けて6勝2敗で並べば、4日後にプレーオフが打たれることになっていた。シード順位の低い結城(5勝2敗)は、たとえ3人が6勝2敗で並ぶケースになっても、上位2人がいるためにプレーオフ出場の権利がない。

 張―小県戦は、4局の中で最も進行が速かった。黒番の張が優勢の状況で、夕食休憩を取らずに打ち続けたが、勝ち碁を逃さないことで定評のある張が終盤に乱れ、逆転負けする。午後8時39分、小県の2目半勝ち。感想戦はなく、張は静かに対局室を去った。無言で首を横に振る様子に無念さが表れていた。

 6連敗で5月にリーグ落ちが確定した不振の小県が、挑戦権獲得に燃える張を破る。大方の予想に反する結果だった。小県は7月にも、結城の優勝の望みを打ち砕いた。気力を失うことなく戦った小県の頑張りが、今期リーグにドラマを生んだ。

 高尾―結城戦は、中盤に結城が白の勢力圏に踏み込んだことを契機に大激戦になった。白を攻める結城に対し、高尾が力強い反撃をみせて優勢に。午後9時40分、高尾の中押し勝ちが決まると、報道陣が対局室へ詰めかけた。高尾の挑戦権獲得、そして同時に、6年続いていた、張の名人戦七番勝負出場が途絶えることが決まった。

 感想戦の後、張が負けたことを告げられ、高尾は挑戦者になったことを知る。「勝ってもプレーオフと思っていた。突然のことで、びっくりしている」

 リーグは4連勝後に張に敗れたが、その後3連勝。並ばれても、首位の座を明け渡すことはなかった。「内容は悪かった。初戦の坂井さんとの一局は投げなきゃいけないような碁でした。趙さん、山田さんとの碁も苦しかった。なんでこの成績なのか自分でもよく分からない」

 本因坊だった2006年、当時の張名人から名人位を奪い、史上6人目の名人本因坊となったが、翌年、張に奪還された。それ以来の名人戦七番勝負だ。「もう名人戦には出られないんじゃないかと思っていた。またこの舞台に立てるのがうれしい。井山名人は強いの一言。僕もまったく勝てない(公式戦1勝8敗)。今回は勉強するつもりで戦います」と語った。

     ◇

 リーグは全日程を終了。溝上が最終戦で勝って残留を決め、この日、対局のなかった王銘エン(エンは王へんに宛)九段のリーグ落ちが決まった。王、山田、小県のリーグ落ち3人は、最終予選にまわり、リーグ即復帰をめざすことになる。(伊藤衆生)

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