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囲碁名人戦七番勝負 第4局1日目ダイジェスト

2010年10月6日

写真立会人の林海峰名誉天元(左)に封じ手を渡す井山裕太名人=6日午後5時37分、神奈川県秦野市、相場郁朗撮影

写真第一着を打ち下ろす井山裕太名人(左)。右は高尾紳路九段=6日午前、神奈川県秦野市、樫山晃生撮影

写真第4局で使われている碁石を説明する女将の宮崎知子さん。江戸時代のものとされる=神奈川県秦野市「陣屋」

図拡大途中図(55−64手)

図拡大途中図(41−54手)

図拡大途中図(1−40手)

●最強の手の応酬/武宮陽光の目

 「黒55から、上辺で競り合いがはじまりました。お互いに相手に楽をさせない、厳しい手の連続。最強に打っていると思います」

 「黒65が封じ手になったわけですが、どのように白の包囲網を突破していくか、注目です。13の六と切る手が成立すれば一番いいのですが、ちょっと無理そうな気がします。僕の本命は、9の五のツケコシ。白に10の五に出させてから11の六に出るのが、石の流れのように思います。今後、右上の白と上辺の黒の一団との力関係で、どちらが上回るかが、2日目の最初の見どころです」

●名人、65手目を封じる

 午後5時35分、名人が52分の長考の末、65手目を封じ、1日目が終わった。ここまで名人が4時間10分、挑戦者が3時間25分を使った。7日午前9時に再開する。

●戦いは上辺へ/武宮陽光の目

「左下の応酬が一段落して、戦いは黒55(12の二)から上辺に移りました。左下がお互い手順を尽くし、思わぬ変化になりましたが、できあがりは、いい加減な(ほどよい加減の)分かれ。さすが実力者どうしの攻防です」

 「黒55は、14の二とワタる手や、12の四とトブ手、9の三に大ゲイマにおどりだす手などをねらっています。まだ手数は短いですが、局面が非常に打ち切った形。白としては、上辺の地をすんなり荒らされるのは面白くない。これから険しい戦いになるやもしれません」

●手筋の応酬/武宮陽光の目

 「白42の切りは手筋です。相手の応手によっては、黒39の石を取りに行くのが白のねらい。実戦のように白42から44に打てれば白46と、黒39の石を制することができます。検討室では『こうなれば白もまあまあかな』という雰囲気でした」

 「ところが、黒47の割り込みを見て、検討陣から感嘆の声があがりました。白は、下手に受けると左下隅を締めつけられて、つらい思いを強いられます。両者、すばらしい手筋の応酬です」

●「事件」の地で

 ドン、ドン。

 太鼓の音が遠く聞こえる。

 対局場の鶴巻温泉「陣屋」では、客が訪ねてくると、入り口の門で太鼓をたたいて出迎える。このしきたりをもたらしたのは、昭和を代表する将棋指し、升田幸三である。

 1952(昭和27)年、第1期王将戦七番勝負で、升田は木村義雄名人を4勝1敗で破った。当時の規定で、次の第6局は名人に対し香を引いて指すことになった。その前夜、升田は、対局場の陣屋を訪ねたが応接がなかったとして、腹を立てて対局を拒んだ。これは、将棋界最高峰の名人に駒落ちで指せば権威を傷つけかねないと考えて打った、升田の芝居だった、ともいわれている。

 この「陣屋事件」を機に、陣屋は客の来訪を告げるための太鼓をもうけた。館内には、升田の肖像画、升田と木村が指す写真、渡辺明竜王らのサイン入り色紙などが飾られている。

 このように、将棋とのゆかりが深い陣屋だが、実は囲碁にとっても大切な存在だ。

 今回の第4局で使われている碁石と碁笥(ごけ)は、江戸時代のものとして陣屋に伝えられてきた。白石は「三河(愛知県)のハマグリ」で、碁笥はそれぞれ桜と紅葉の螺鈿(らでん)があしらわれている。

 陣屋ではこれまで、王座戦などのタイトル戦が打たれた。張栩棋聖らも、この碁石を使ったのだろう。碁盤のふたには「十段 小林光一」などの裏書きがみられる。名人戦で使われるのは初めてだ。

 最近では、将棋の王位戦と王座戦の決着がついたことでも知られる陣屋。おかみになって2年目の宮崎知子さん(33)は「プロ中のプロの方ばかりをお迎えしています。おふたりの気持ちが対局に集中できるよう整えるのが一番の仕事だと思っています」と語る。

 数々のドラマの舞台となった地で、また新たな名局が生まれるのか。

●対局が再開

 午後1時を回り、名人が41手目を「2の十四」に打って、局面は再び進みはじめた。

●丁々発止のやり取り/武宮陽光の目

 「黒39は名人の機敏な様子見です。白40、続いて黒から一路右のオサエと交換した後に三々に入っても、下辺がワタりづらいので、その威力が半減するからです。それでも、挑戦者は白40とハネました。1日目の午前中から丁々発止のやり取りで、このあとどうなるのか楽しみです」

●昼の休憩に

 正午、名人が41手目を考慮中に昼食休憩に入った。消費時間は名人1時間37分、挑戦者1時間23分。

●白、外まわりにつく/武宮陽光の目

 「黒33とツケたのは、一つの筋。名人らしい、張った手です」

 「それに対する白34が分岐点でした。黒33の一路下にハネるのが一番厳しく、険しい戦いになるところ。白が捨て石を利用して外まわりにつく変化になりそうで、どの図でも白がやれそう――というのが検討室の見立てでした。そのなかでも、挑戦者は白34と、非常に穏やかで分かりやすい進行を選びました。戦いを避けたのか、これで十分と見たのか。実戦でも、白が外まわりについて、言い分が通った形ではあります。挑戦者は満足しているのではないでしょうか」

●深謀遠慮の挑戦者/武宮陽光の目

 「白20とハッた手が、まず工夫です。白22と一間にトブのが定石ですが、右上隅の黒が堅いので、右辺は互いにとって価値が低い。ふつうは黒21、23とノビられるのはよくないとしたものですが、この場合は黒に先手を与えず、白24と下辺に先着するほうが大事と判断しました」

 「さかのぼって、黒15に対して白は小ゲイマに受ける場合が多いのですが、挑戦者は白16と一間高く受けました。本譜のように白24から下辺での戦いを起こした場合、一路高いほうがより戦いに強い。このような展開も視野に入れての、白16の一間受けだったのでしょう。挑戦者の深謀遠慮がうかがえます」

●武宮陽光の目 @陣屋

 ネット解説は、おなじみの武宮陽光五段。

 「みなさん、おはようございます。今日明日と、ネット解説をさせていただきます。井山名人の怒濤(どとう)の3連勝で迎えた第4局。この勢いのまま名人が防衛するのか、高尾挑戦者が巻き返すのか、注目の一番をどうぞお楽しみください」

●名人の第一着、右上の小目

 井山裕太名人(21)が高尾紳路九段(33)に3連勝して迎えた第35期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)第4局が6日、神奈川県秦野市の旅館「陣屋」で始まった。若き名人が一気に初防衛まで走るか、それとも元名人が意地をみせるか。

 「時間となりました」。午前9時、立会人の林海峰名誉天元が静かに告げると、両対局者が一礼を交わした。先番の名人が第一着を右上の小目に打ち下ろし、挑戦者は左下星に打って応じた。

 対局は2日制。持ち時間は各8時間で、7日夜までに終局する。

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