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囲碁名人戦七番勝負 第4局2日目ダイジェスト

2010年10月7日

写真封じ手を打ち下ろす井山裕太名人(左)。右は高尾紳路九段=7日午前、神奈川県秦野市、樫山晃生撮影

図拡大最終図(200―265手)

写真拡大途中図(65―199手)

図拡大途中図(1―64手)

写真高尾挑戦者が注文したカレーライス。ビーフとチキン、両方そろえられた

写真アサヒコムの解説は、名人戦おなじみの武宮陽光五段

●すばらしい好局/武宮陽光の目

 「本局を振り返ると、序盤から手筋の応酬でした。白が下辺の外回りについて、布石として成功したかと思われましたが、黒39の三々から黒47の割り込みが強烈な手筋。ここで黒が若干ポイントを稼ぎました」

 「黒55からの上辺での戦いは、非常に見応えがありました。黒75と急所を突かれ、白は形がよれましたが、90からの出切りが渾身(こんしん)の勝負手。白118と回った時点では、白が盛り返していたと思います。その後も互いに深い読みを必要とする難しい局面が目白押しで、白160と生きた段階では白がはっきりよさそうでした」

 「黒は161から左上隅に手をつけ、179から中央の白へ寄りつくという一連の流れが強烈でした。白としては、もう少し丁寧に打っていれば、まだわずかに残っていたかもしれません。でも、神経を使う局面が続き、秒読みに追われるなかで、挑戦者が正確さを欠いたのも致し方ないと思います。熱のこもった、すばらしい好局だったと思います」

 「2日間、読んでいただき、どうもありがとうございました」

●名人、4連勝で初防衛

 第35期囲碁名人戦の第4局は7日午後7時45分、井山名人が挑戦者の高尾九段に黒番中押し勝ちし、負けなしの4連勝で名人位を初めて守った。ストレート勝ちでの決着は、名人戦では10年ぶり。

●名人、強烈な寄りつき/武宮陽光の目

 「白178に対し、黒179、181とハザマを突いた手が厳しく、急に中央の白の眼形が乏しくなりました。白は、黒195のコスミツケを急所に食らったのがつらい。死にはしませんでしたが、この寄りつきで黒が攻めの大きな成果を得ました。黒がわずかに抜き去った感じがします」

●争いは中央へ/武宮陽光の目

 「左上隅では、白が最善最強に受けたため、黒が生きるか死ぬかのみが焦点のコウが発生しました。黒にとっては、手にはなりましたが、決め手となるほどの大きな打撃は加えられませんでした。ここでのコウ争いは、いったん休み。黒は179から、真ん中の白に寄りつきに行っています」

●名人、奇手放つ/武宮陽光の目

 「黒161から名人が左上隅に手をつけにいきました。まさか、こんなところに手をつけるとは。検討陣の誰もが予想しなかった、気づきにくい手。打たれてみると、どう受けるのがいいか悩ましい。左上隅で黒が生きてしまったり、最悪の場合ダメ詰まりの白石が取られてしまったりする可能性まであります。白は162から164とサガって最強に受けたのですが、黒167まで進んでみると、どうやら黒161が何かしらの手になっている感じです。いやあ、すごい手があったものですね!」

●白、大きな生還/武宮陽光の目

 「右上隅の黒が生きるかどうかのコウが発生しました。白158に対して、黒からは白を殺す手があります。ただ、その後も白からのコウダテが無数にあるので、黒は右上隅のコウ争いに勝てません。いきおい実戦は、黒が159とコウを解消し、右下隅の白が生き返る変化となりました。白がここを生きたのは大きく、細かいながらもやや面白くなったような気がします」

●地合い勝負か?/武宮陽光の目

 「右下隅を取られた形の白は、左上隅で大きな地をつくるか、上辺の黒を取ってしまうかしないと苦しい状況です。ただ、白には右上隅に楽しみがあります。白152と置くと、黒は無条件で生きることができず、コウになります。白から右下隅に生きるぞというコウダテがたくさんあるので、このコウ争いでは白が勝つ可能性が高いです。まだまだ地合い勝負になる展開もありえます」

●王手飛車取り?/武宮陽光の目

 黒133に対し、挑戦者は白134と受けたが、「黒135が両にらみ、言ってみれば王手飛車取りのような手です」。白は136で上辺の一団の眼を確保したが、「黒137の置きがまた好手です。白は部分的には眼ができない形。名人のねらいすました手が決まったといえます」。

●鋭い手に驚きの声/武宮陽光の目

 黒133の置きが検討室のモニター画面に映ると、検討陣から驚きの声があがった。

 「左上隅の白130のツケコシを放置してのタイミング。僕も驚きました。白の受け方によっては、右下隅の白石を御用にしようというのがねらい。検討陣もまったく見ていなかった手で、驚嘆しました。名人らしい鋭い一着。ねらいすましていたのかもしれません」

●名人、小粋な技/武宮陽光の目

 「黒117とツナいで、白90からの戦いが一段落しました。ここで先手が回った挑戦者は、待望の白118。地としても大きい右下隅の眼をはっきりさせ、かつ右上の一団への防御にもなっています。挑戦者の、白90からの力強いシノギが成功した形と言っていいでしょう」

「対する名人の黒119のコスミは、白にとればいやらしい手。受け方が非常に悩ましいです。白120と受けて無事ではありますが、この2手の交換が入ることで、白130のツケコシを緩和しています。小粋なテクニックですね」

●挑戦者の勝負手、功を奏す/武宮陽光の目

 「白90からの出切りから、両者、一歩も引かない応酬が続いています。白108と手を戻して、右上の白の一団は部分的には取られづらい形になりました。ただ、右下隅との絡みで、眼形がなくなることもありえますので、挑戦者としては早く右下隅に先着したいところです」

 「上辺の黒石の眼がない状況になり、名人がどう整形するかというところでした。名人は、黒109と相手の急所に迫りながら、踏み込んだシノギをみせました」

 「白94の勝負手が出た時点では、どちらかがつぶれかねない状況でした。でも、その後は、互いにめいっぱいの手を繰りだし、うまく分かれました。力のこもった碁になっています」

●対局再開

 午後1時、対局が再び始まった。

 昼食で高尾挑戦者が選んだのはチキンカレーだった。

●昼食休憩に

 正午ちょうど、高尾挑戦者が96手目を考慮中に昼食休憩に入った。消費時間は名人が5時間20分、挑戦者は5時間9分。

 「陣屋では伝統のカレーライスをご用意しているんですよ」。おかみの宮崎知子さん(33)が言う。何日も前からタマネギをいため、ぐつぐつ煮込んだ味は「やさしい中辛」とのこと。一般のメニューとしては出しておらず、囲碁や将棋のタイトル戦の時だけ特別に準備しているという。

 メニューは、ビーフカレーとチキンカレーの2通り。それぞれ、やや辛口と甘口だ。9月末に陣屋で指された第58期将棋王座戦第6局では、羽生善治王座(40)=名人、棋聖=が大盛りのビーフカレー、対する挑戦者の藤井猛九段(40)が特注のチキンカレーうどんを注文した。結果は、羽生王座が勝ち、タイトルを守るとともに、王座戦19連覇という偉業も成し遂げた。

 さて、この日は高尾挑戦者がカレーを注文した。で、ビーフとチキン、どっち?

 「両方出しました」とベテランの仲居さん。「その場でお好みで選んでもらえるように、と思いまして」

 さて、挑戦者の選択やいかに。対する井山名人は、温かいキノコそばを頼んだ。

●挑戦者、渾身の勝負手/武宮陽光の目

 「挑戦者は、ただ生きるだけではじり貧と見て、白90からの出切りを決行しました。これは上辺の黒一団との攻め合いをねらった手。非常に難解なのですが、第一感は白が大変な印象です。挑戦者、渾身(こんしん)の勝負手。局面は風雲急を告げています」

●名人の厳しい追及/武宮陽光の目

 「白82は、たいへん難しいところです。白は、黒75と77の二子を取れればいいのですが、直接取る手が見当たりません。白からすると、右上の一団の眼がないのと、白80の一路上の断点も気になるところです」

 「実戦の進行では、黒83から87と一間トンだのが厳しい追及で、黒89のオサエに回れたのが非常に大きい。これによって、白は右下隅との連絡も断たれ、その右下隅も黒から17の十八にスベられると死なないまでもひどい目に遭います。白は、上辺のシノギと右下隅の生きを両立させなければなりません。まさに、クモの巣にかかったような状態で、厳しい状況にみえます」

●名人、急所の一撃/武宮陽光の目

 「白74は、がんばった手です。たとえば白75と上に守っておけば堅かったのですが、それだと上辺の黒の一団にプレッシャーがかかりません」

 「これに対して名人はノータイムで黒75と打ちました。ひと目、行きたくなる急所です。白は76の反発を用意していましたが、黒77と引かれました。白78では、ほんとうは黒75の一路上に形よくオサえたいところですが、黒79から出切られると、白が危険になります。実戦は白78と愚形につながり、ちょっとつらい。名人の一撃が入った感じです」

 「振り返ってみると、白68、黒69の交換をせずに、白74の手で白76の一路右に肩をつくくらいが相場だったかもしれません。挑戦者は、つらいけれどもこの形のほうが堅く守るよりいいとみたのか、あるいは少し誤算があったのか。局後にお聞きしたいところです」

●両者、早くも気合十分/武宮陽光の目

 「おはようございます。2日目もよろしくお願いします」

 「封じ手は9の五のツケコシでした。昨日の予想がズバリ当たりました! 上辺の白の包囲網を突破するには、この手が一番よさそうです。実戦のように進んだ後、黒73と一間トンで、白の一歩先に行けました。このことが封じ手のツケコシの大きな意味です」

 「両者、早くも上着を脱ぎ、前傾姿勢。気合十分ですね。今日も楽しみです」

●名人の封じ手、「9の五」のツケコシ

 井山裕太名人(21)が高尾紳路九段(33)に3連勝して迎えた第35期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)第4局の2日目が7日午前9時、神奈川県秦野市の旅館「陣屋」で打ち継がれた。

 定刻になると両対局者が1日目の棋譜を並べ、続いて立会人の林海峰名誉天元が名人の封じ手65手目を開いた。「封じ手は9の五」。名人はすぐに打ち下ろすと、手元のぬれタオルで口と手をぬぐい、水を飲んだ。

 持ち時間各8時間のうち、1日目で名人が4時間10分、挑戦者が3時間25分を使った。7日夜までに終局する。

     ◇

 アサヒコムでは、1日目に引き続き、名人戦おなじみの武宮陽光五段が、楽しくて切れ味鋭い解説を随時お届けします。

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