2011年8月16日
第36期囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)は全日程を終え、井山裕太名人の挑戦者に山下敬吾本因坊が名乗りをあげた。4期ぶりにリーグ復帰した山下は、プレーオフまでもつれた挑戦権争いを制し、8年ぶりに名人戦七番勝負に登場する。
■4期ぶり、リーグ復帰直後
挑戦権争いに残っていたのは、5勝2敗の山下、結城聡天元、羽根直樹九段の3人。4日に打たれた最終一斉対局(第9ラウンド)では、山下が結城との直接対決に競り勝ち、坂井秀至碁聖に半目勝ちした羽根との6勝2敗同士のプレーオフ(8日)に。その、6年ぶりとなるプレーオフを制したのは山下。「自分なりには満足している」という好局だった。
開幕2連勝の好スタートを切った山下だったが、羽根と張栩棋聖に敗れ、5局を終えて3勝2敗。「早いうちに2敗したので挑戦権は難しいと思っていた」と振り返る。7月に羽根が2敗目を喫したことで希望が生まれたこともあり、「運がよかった」と話す。苦戦を強いられた結城との一戦が印象深いという。
山下は2003年に依田紀基名人に挑戦(依田が4勝1敗で防衛)。05年はプレーオフまで進んで最後に挑戦権を逃し、07年に1勝7敗の不振でリーグ落ち。以来、復帰に苦しんだ。
その間、他棋戦では棋聖4連覇を成し遂げ、現在は本因坊を2連覇中。「自分では4期ぶりというより、もっとずっと久しぶりというイメージです」。名人戦リーグに長く不在だったうっぷんを晴らすかのような復帰後の即挑戦権獲得だ。そして、「8年前の七番勝負はあっさり負けたということしか覚えてない。ほんとに久しぶり。いまはほっとしています」と語った。
一流棋士の居並ぶ名人戦リーグは、シード上位の層が厚く、予選を勝ち抜いた「新参加」(シード7位)の棋士が成績を伸ばせないことは少なくない。しかし今期は、高尾紳路九段(同1位)、張(同2位)とともに「四天王」と称される山下と羽根(10期ぶり)が復帰。36年の歴史で初めて、新参加同士によるプレーオフへ進んだ。プレーオフは今年の本因坊戦七番勝負と同じ顔合わせ。羽根の、本因坊戦、碁聖戦に続く、3タイトル連続の挑戦権獲得はならなかった。
開幕3連勝の結城は7月に張に痛恨の半目負け。最終戦も惜敗だった。前名人の張は5月に3敗、前期挑戦者の高尾も7月に3敗を喫した。最終戦の時点で、張と高尾に挑戦の可能性はなかった。
一方、7月に確定していた趙治勲二十五世本因坊に加え、最終戦で敗れた坂井と林漢傑七段のリーグ落ちが決まった。坂井と林の2人が敗れたことで、8月4日に対局のなかった溝上知親八段が残留した。
趙はリーグ在籍通算32期(名人獲得の9期を含む)で、林海峰名誉天元の39期(旧名人戦を含む)に迫っていた。坂井は連続7期在籍だった。3人は次期最終予選に出場して、即復帰をめざす。(伊藤衆生)