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2011年10月13日18時20分
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囲碁名人戦第5局1日目ダイジェスト

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写真:第一着を打ち下ろす山下敬吾本因坊。右は井山裕太名人=13日午前9時、静岡県熱海市、松本敏之撮影拡大第一着を打ち下ろす山下敬吾本因坊。右は井山裕太名人=13日午前9時、静岡県熱海市、松本敏之撮影

写真:対局を検討する武宮陽光五段=13日午前11時、静岡県熱海市拡大対局を検討する武宮陽光五段=13日午前11時、静岡県熱海市

写真:囲碁名人戦第5局が打たれている「あたみ石亭」=12日午後、静岡県熱海市、松本敏之撮影拡大囲碁名人戦第5局が打たれている「あたみ石亭」=12日午後、静岡県熱海市、松本敏之撮影

図:棋譜(49−63)拡大棋譜(49−63)

図:途中図(21―48)拡大途中図(21―48)

図:途中図(1−20)拡大途中図(1−20)

★互いに自信の進行か〈武宮陽光の目〉

 「本因坊は結局、黒59と辛抱しました。それを見て、名人は白60を石音高く打ち下ろしました。衆目の一致する絶好点で、名人の自信がうかがえます。対する黒61は、本因坊らしい、じっくりした手厚い一着。ふつうは大場に目がいって、つい先を急いでしまいたくなるところですが、逆に白に61と出られると中央の黒の壁が薄くなってしまいます。ただ、この手は辛抱したのか自信があるのか、本因坊に聞いてみないとわかりません。名人の62手目は、右辺の黒模様をどのように荒らすか難しいところでしたが、右上隅のツケから様子を見ました」

 「1日目は、左上での応酬に非常に見応えがありました。白は、封鎖されそうなところを突破して逆に黒を封鎖し、生きを強要しました。非常に気分のいいところだったのではないでしょうか。とはいっても、黒も中央に壁を築いて、まだ手つかずの右辺一帯に大きな可能性があります。私の感触では白の流れがいいように思いますが、まだまだ難しい局面。2日目の戦いが楽しみです」

●名人が封じ手

 午後5時39分、井山名人が64手目を封じ、1日目が終わった。持ち時間各8時間のうち、挑戦者が3時間37分、名人が4時間2分を使った。

 14日午前9時から打ち継がれ、夜までに勝敗が決まる見込み。

★白、いい調子〈武宮陽光の目〉

 「黒49とハサミツケたのはお互いの眼形の急所ですが、外に出る(具体的には白52の一路右)のとどちらがいいかは判断が難しいところでした。白52から56と黒を封鎖する手が非常にいい調子。左上の黒の一団は、まだ部分的には眼がありません。ここで素直に生きるのもつらく、かといってうまい返し技もちょっと見当たりません。黒はどう手を入れるか、悩ましいところです」

★名人、真っ向から反発〈武宮陽光の目〉

 「本因坊は黒29、33と封鎖気味に厳しく迫ったのですが、対する名人は白32、34と真っ向から反発し、その結果、白は36から46と突破できました。こうなっては黒が少しつらい印象です。できれば白34のツケに対して黒36とハネて抑え込みたいところですが、本因坊はがんばりきれないと判断したのでしょう。白が安心できた一方、黒は左上の一団がやや薄くなりました」

●おやつ

 午後3時になり、名人にイチジクとカキが出された。挑戦者は注文なし。

★本因坊、厳しく迫る〈武宮陽光の目〉

 「午後に入って本因坊がどう攻めるかが楽しみなところでしたが、黒29と迫ったのが一番厳しい手。32とツケていれば穏やかだったのですが、それよりも大きく攻めにいきました。ただ、厳しくいったぶん反発も大きいので、ともすれば身攻めになってしまう恐れもあります。厳しい攻めが成功するか、打ちすぎになるかは紙一重です」

●両者ゆかりの対局場

 午後1時、対局が再開した。

 本局が打たれているのは、静岡県熱海市のあたみ石亭。その名のとおり奇岩巨石がふんだんにあしらわれた温泉宿は、過去の名人戦でも数多く使われてきた。

 井山名人にとっては一生忘れられない場所だろう。2年前の第34期名人戦第5局、張栩名人を破り、史上最年少で名人位を射止めたのが、ほかならぬこの宿だった。新名人となり、「最高の一日だった」と初々しく話したのは記憶に新しい。

 その6年前、山下挑戦者は第28期名人戦第4局をここで戦った。そのときは依田紀基名人に敗れ、初の名人位奪取はならなかった。

 そして今回、ゆかりの対局地を再び訪れた2人。12日夕に対局場を検分した際、挑戦者は8年前のことを問われ、「あんまりおぼえてないですね。ということは負けたんですかね」ととぼけ、関係者を笑わせた。一方、前とは立場が入れ替わり、カド番で迎えた名人。ふだんと変わらぬ様子で、淡々と検分を済ませた。

 晩は満月だった。〈月さすや碁を打つ人のうしろ迄(まで)〉。そんな子規の句が浮かぶような、煌々とした月明かりが秋深まる湯宿を包んでいた。大一番を控え、両雄はどんな心持ちでこの月を眺めたのだろう。

★上辺一帯の力関係に注目〈武宮陽光の目〉

 「名人が白18と上辺に打ち込んで、最初の競り合いが始まりました。もともと黒の石数が多い所ですから、白のほうがしのぐ立場ではあるのですが、左上の黒もまだ眼のない石。白としては、あわよくばこの黒をおびやかしながら治まることをねらっています。黒は、それに気をつけながらうまく白を攻めたいところ。これから本因坊がどのような攻めを展開し、この一帯の力関係がどう変化するかに注目したいと思います」

●昼の休憩に

 正午となり、昼の休憩に入った。名人の昼食はざるそば。挑戦者は注文なし。

 現在は挑戦者が29手目を考えている。挑戦者が1時間38分、名人が1時間22分を使った。

★地で先行ねらう名人〈武宮陽光の目〉

 「右上の一間ジマリが勢力重視の手なので、ふつうはそれを削減しようと打つ人が多いと思います。ところが、名人は下辺からカカってスベったり、左上のカカリに対して下ツケて黒にナダレさせたりしました。これは、相手に勢力を張らせてもかまわないということ。この碁は地で先行して勝とうという、名人の意図がかいま見えます」

★武宮陽光の目@あたみ石亭

 本局のネット解説は、おなじみの武宮陽光五段。担当8年目を迎え、よりわかりやすく対局の模様をお伝えします。

 「おはようございます。今期もよろしくお願いします」

 「今期は激しい戦いが多く、どの碁もたいへん面白くて見応えがありました。本因坊に、形にこだわらない、ごつい手が多く、印象に残っています」

 「本局ですが、黒番の右上の一間ジマリは、本因坊得意の形のひとつ。それに対して、名人が6手目、右下に下辺のほうからカカったのは、ありそうで意外になかった手です。早くも今までにない碁になりつつあります」

      ◇

 たけみや・ようこう 1977年、東京生まれ。98年入段(プロ入り)、2005年五段。日本棋院東京本院所属。今年7月から囲碁将棋チャンネルで「武宮陽光のビューティーフォーム」の講師をつとめている。父は武宮正樹九段。

●第5局始まる

 井山裕太名人(22)に対し山下敬吾本因坊(33)が3勝1敗としている第36期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第5局が13日、静岡県熱海市の「あたみ石亭」で始まった。挑戦者がこのまま初の名人位奪取を果たすのか、名人が土壇場で踏みとどまるか。

 対局室には井山名人、次いで山下挑戦者が入った。名人が碁盤を磨いて待ち、挑戦者は座るや背筋をのばしてじっと目を閉じる。今シリーズでは見慣れた朝の光景だ。定刻の午前9時、立会人の羽根泰正九段の合図で、両対局者が一礼を交わした。先番は挑戦者。第一着を右上小目に打ち下ろすと、名人はおしぼりで手をぬぐい、左下星で応じる。戦いの幕が上がった。

 対局は2日制で、持ち時間は各8時間。14日夜までに勝敗がつく見込み。

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