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2011年10月28日21時40分
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囲碁名人戦七番勝負 第6局2日目ダイジェスト

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写真:井山裕太名人(右)に封じ手を示す立会人の王銘エン九段=28日午前9時3分、静岡県伊豆市の「鬼の栖」、松本敏之撮影拡大井山裕太名人(右)に封じ手を示す立会人の王銘エン九段=28日午前9時3分、静岡県伊豆市の「鬼の栖」、松本敏之撮影

写真:井山裕太名人に出されたフルーツとアイスティー=28日午後2時53分、静岡県伊豆市の「鬼の栖」、松本敏之撮影拡大井山裕太名人に出されたフルーツとアイスティー=28日午後2時53分、静岡県伊豆市の「鬼の栖」、松本敏之撮影

図:黒・井山―白・山下
最終図(1―281)拡大黒・井山―白・山下 最終図(1―281)

図:黒・井山―白・山下 途中図(101−137)拡大黒・井山―白・山下 途中図(101−137)

図:黒・井山―白・山下 途中図(55−100)拡大黒・井山―白・山下 途中図(55−100)

図:黒・井山―白・山下 途中図(1−54)拡大黒・井山―白・山下 途中図(1−54)

★「心の格闘技」体現した新名人〈武宮陽光の目〉

 「序盤から戦いにつぐ戦いで、ほんとうに力と力のぶつかり合いでした。局後の感想によると、本因坊が下辺に手をつけていったのは、その時点では形勢不利とみての踏み込みだったようです。そこでの折衝で本因坊が見事にさばいて勝利をものにしたわけですが、井山名人がどう打てばよかったのかはまだ結論が出ていません。それほど、お互いに死力を尽くした、ぎりぎりの戦いだったと思います」

 「シリーズを通して、本局に象徴されるような激しい戦いや、深い読みに裏づけされた力と力のぶつかり合いが印象に残りました。新名人は『囲碁は心の格闘技』といった趣旨の言葉を残していますが、まさにそれを体現する素晴らしい碁ばかりでした。そんな碁を見せてくれたお二人に、心から感謝したいと思います。ほんとうにお疲れ様でした」

 「読者の皆様、2日間にわたりお付き合いくださいまして、ありがとうございました」

●山下本因坊、新名人に

 静岡県伊豆市で打たれた第36期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)第6局は28日午後8時3分、挑戦者の山下敬吾本因坊(33)が井山裕太名人(22)に281手までで白番3目半勝ちを収め、通算4勝2敗で初の名人位を手にした。同時に、囲碁界でもとりわけ格式のある「名人本因坊」が生まれた。2006年の高尾紳路九段に続き、史上7人目。

★クライマックス〈武宮陽光の目〉

 「本因坊は、白144と切って下辺をさばきにいきました。それに対して名人は最強に応戦。その後、大コウを解消した名人。いよいよクライマックスです」

●名人、秒読みに

 対局地の修善寺はとっぷりと暮れた。午後6時を過ぎて名人は残り時間が10分を切り、秒読みに入った。その5分後、挑戦者も秒読みに。大一番もいよいよ佳境に入った。

★本因坊、力強い踏み込み〈武宮陽光の目〉

 「白122の様子見に、黒123と外から受けてがんばったのですが、そこで白124と打ち込んだのが本因坊らしい力強い踏み込み。下辺の黒地を少しでも減らせれば成功ですし、もし生きてしまえば非常に大きな戦果です。名人としてはとても頭が痛いところ。ただ、まとめて取られて持ち込みとなってしまう恐れもあるので、本因坊としてもまるで気楽というわけではありません。綿密な読みが必要で、たいへん難解な局面。どのような攻防が展開されるか、目が離せません」

★戦い収束、ヨセ勝負か〈武宮陽光の目〉

 「黒89と強襲した手から、両者一歩も引かない激しい戦いが起こりました。途中コウ争いが起き、黒が白104の一子をポン抜き、白が中央の黒石を取り込むことで決着しました。見た目は中央の取られた黒石が大きく見えますが、まだ手つかずの下辺がこのポン抜きによってまるごと黒地になればたいへん大きい。激しい戦いでしたが、またもやうまく分かれて、どうやらヨセ勝負になりそうです。まさかこんな激しい碁がヨセ勝負になるなんて、さすが頂上決戦にふさわしい一局ですね」

●名人、静岡と山梨の実りを食す

 午後3時前、名人がワイシャツ姿になった。2日目に入り、両対局者とも上着を脱がずに対局を続けていた。

 そして間もなく、おやつの時間となった。名人はフルーツと冷たいレモンティー、挑戦者は温かいミルクティー。フルーツは、地元静岡産のメロンに、山梨産のマスカットと柿だ。ちなみに名人が勝てば最終局はその山梨で打たれる。

★名人、強烈な一撃〈武宮陽光の目〉

 「黒85とアテたのが双方の根拠の急所です。それに対して本因坊は白86の放り込みから白88とアテて応えました。この手は、もし黒がこの一子をツゲば、黒21の二路上に置いて黒の眼形を脅かす手をねらっています。ただし、全部が死ぬわけではなく、これじたいが自らのダメを詰める手です。さらに、黒一子を抜いてつながるには手がかかりすぎる意味もあり、ちょっと感じの悪い手にみえます。この瞬間に黒89と急所に迫ったのが、名人の強烈な一撃。白がダメを詰めた瞬間だけに、より厳しく感じます。もしこれが決まれば勝着になりそうなほどの破壊力をもった手で、ここでの戦いが形勢に大きく影響しそうです」

●対局再開

 午後1時、対局が再開した。山下挑戦者が休憩前から82手目を考え続けている。残り時間は3時間を切った。

★スリル満点の競り合い〈武宮陽光の目〉

 「本因坊が82手目を考慮中に昼の休憩に入りました。お互い眼のない石が細切れになっており、いまそれらが競り合っている状態です。これほど多くの石がからみ合っている碁はたいへん珍しく、見ているほうはスリル満点で非常に面白いですね。力の均衡が崩れると形勢も傾くことになりますので、緊迫した戦いが続くと思います。午後はこれらの石の力関係がどうなるかが大きな見どころです」

●名人の昼食、またもそば

 定刻の正午、昼の休憩となった。対局地の修善寺では正午の合図に、防災行政無線から「恋はみずいろ」の旋律が流れている。午後5時には「ムーンリバー」が鳴り響く。

 前日ざるそばを頼んだ名人の2日目の昼食は、温かいそば。黒米豆腐に香の物、グレープフルーツがついている。黒米豆腐は、黒い米の粉を豆腐に混ぜ込んだ、修善寺の名物。一方の挑戦者はまたも注文がなかったが、午前中はしきりにあめ玉をなめていた。

 現在は挑戦者が82手目を考えている。持ち時間各8時間のうち、残りは名人2時間23分、挑戦者3時間3分。

★うまい分かれに〈武宮陽光の目〉

 「黒55は、白の受け方によって先手で上辺黒の眼形を確かにしようとした手です。それに対して白はどう受けても利かされの感があるので、白56と手を抜いて大きな右上のツナギに回ったのは気合の一着。その後、黒が57から形を決め、63と65に石を持ってきたことで、上辺の黒石は部分的に生きを確保しました。黒は69、白72とお互いに中央へ進出し、まだまだ戦いは続きますが、とりあえずお互いにどこかの石が死ぬ心配はなくなりました。2日目が始まる前はどうなることかと思っていましたが、さすが上手はうまく分かれるものですね」

●名人、長考で左辺へ

 けっきょく名人は、55手目に57分を費やし、左辺にツケた。消費時間は互いに4時間台に入っているが、55手目の長考で名人が上回った。その後、互いの手は左上へ伸びている。挑戦者は正座を崩さない。あめ玉をなめながら腕組みをし、険しい表情で考えている。

●名人、長考に沈む

 挑戦者の封じ手を見て、名人が長考に沈んでいる。考慮時間はすでに40分を超えた。頭をかいたりタオルで顔をぬぐったり。「うーん」「まいったなあ」といったぼやきも聞こえてくる。やはり封じ手は想定外の一着だったのだろうか。

★力強い封じ手〈武宮陽光の目〉

 解説は、おなじみの武宮陽光五段が担当しています。ますます目の離せない両対局者の攻防を、終局までわかりやすくお伝えします。

 「おはようございます。本日もよろしくお願いします」

 「封じ手のコスミは、検討陣の誰もが予想しなかった手でした。きのう、右上を受けるか中央脱出するかの2通りと申し上げました。ただ、右上を受けるのは、黒から白50の一路下にハネられて封鎖され、白がつらい。ですので、私のなかではノビきりが本命かなと思っていました」

 「白54は、間接的に黒から封鎖されるのを防いだ手です。もし黒が強引に封鎖してくれば、白54が働き、逆に中央の黒四子が取られてしまいます。加えて、白54が来たことによって、黒からの割り込み(白18の一路下)の味を封じて、上辺の黒の眼を奪いに向かう態勢が整いました。ただ脱出を図るだけでなく、さらにねらいを持たせた手。さすが本因坊らしい、力強い一着でした」

      ◇

 たけみや・ようこう 1977年、東京生まれ。98年入段(プロ入り)、2005年五段。日本棋院東京本院所属。今年7月から囲碁将棋チャンネルで「武宮陽光のビューティーフォーム」の講師をつとめている。父は武宮正樹九段。

●挑戦者、意外な封じ手

 井山裕太名人(22)に山下敬吾本因坊(33)が挑む第36期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第6局は28日、静岡県伊豆市の「鬼の栖(すみか)」で打ち継がれた。

 午前9時、立会人の王銘エン(エンは王へんに宛)九段が「時間になりました。お願いします」と告げると、両対局者が前日の手順に沿って並べ直した。山下挑戦者の封じ手(54手目)は、9の八のコスミ。ほとんど予想されていなかった手で2日目が幕を開けた。

 持ち時間各8時間のうち、1日目で名人が3時間42分、挑戦者が3時間56分を使った。夜までに決着する見通し。もし山下本因坊が勝てば、初めての名人位獲得となる。

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