1〜32手
自分の頭で考える
対局前に記者室をのぞくと、将棋名人戦第5局がテレビに映し出されていた。小林覚いわく、「将棋は分からないなあ。何十年も一応やってはいるけれど、ルールを覚えたばかりの人に平手で負けていやになる」。
小林のライバルがじつは記者である。おかしな紳士協定――定跡や手筋を勉強してはいけないという、将棋の先生にしかられそうな約束のもと、生涯平手で戦うヘボ将棋だ。かっこよくいえば、借りものの知識ではなく自分の頭で考えて指そうとの精神である。
こんな話を持ち出したのは、いつも以上に本局の小林に、定石や常識を排して戦う姿勢を感じたからだ。
白10は20分の長考。狭いほうからカカるのがまず変わっている。このときすでに構想ができあがっていたのだろう。中国流の黒5の一子に楽をさせない方針だ。
小林の方針を理解すれば、白18、20以下も納得できる。28、30も露骨このうえない打ち方だが、右辺が主戦場と考えれば不自然ではない。解説は棋聖戦リーグやNHK杯でおなじみの宮沢吾朗九段。鬼才が難局をどうさばくか、おたのしみに。
「黒はこのコースを避けることができた。21で黒Aとツゲば白25とコスむくらいのもの。そこで黒Bとトビ出して、どうということはない。しかし21以下が一つの気合なんですね」
白32とツケて、ほぼ封鎖形。小林の速攻、吉と出るか凶と出るか。さあ小県は簡単には打てない。長考のうちに昼食休憩に入った。
(春秋子)
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2005年07月05日