1〜38手
リズム
「サン、ハイ、♪」
和服姿で正座の依田。ひざの上の右手がピクリと動き、石をつまんで、右上隅小目に第一着を打つ。音楽が始まるときの指揮者のような、リズム感抜群の動きだった。
いま依田は波に乗っている。この対局の1カ月前には日中韓3カ国対抗の団体勝ち抜き戦で日本を優勝に導いた。2連敗で出遅れた本因坊戦リーグは後半の5連勝でプレーオフに進出。惜しくも挑戦権は逃したが、この勢いは本物だろう。
高尾はここまで無傷の3勝。依田に勝って4連勝となれば、独走態勢という雰囲気さえある。リーグ中盤の注目局だ。
序盤の手順を一気にお見せする。白8はゆっくり打つ意思表示。黒が13と左下に向かえば白は14と打ち込みたくなる。
解説の林海峰名誉天元は「35の地点にケイマするのは、大勢上、双方にとっての好点」と指摘する。対局者の感想もそれを裏付けていた。
依田「白に35とケイマされるのが嫌だった」
高尾「打たれてみると大きなところでした」
白が35を占めれば、上辺黒3子はいっぺんに息苦しくなる。それでも黒23で35を選ばないのが、地で頑張る依田の流儀だろうか。
白は26で35に打ってみたかった。黒が素直に上辺を備えるとは思えないが、黒Aツケには白B、黒C、白Dとブツカり、黒に先手を渡さない。
林「黒35、37と連打できて黒の雰囲気がいい。白は上辺が薄く、何かしなければならないという催促された気分です」
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(伊藤衆生)
2006年05月02日