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黒黄翊祖  七段   対   白依田紀基  九段

気分をかえて

2007年08月03日

 先に対局室の「幽玄」に姿を現した黄翊祖は、盤面を丁寧にふき清め、目を閉じて開始を待つ。

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棋譜

 黄に遅れること10分。「おはようございます」と、ほんのり笑みを浮かべた依田紀基が上座についた。本因坊戦挑戦手合に敗れて1週間。他の棋戦でも負けが重なり、本局まで5連敗中と調子を落としている。

 5分ほどかけた依田の2手目はなんと目外し。4手目も高目で「気分を変えてみたのだけど」。

 「番碁に負けて、気持ちは分かりますが。でもここ一番では決して打たないでしょ。5まで黒に3隅占められては、趣向を生かすのはたいへん」と解説役の大矢浩一九段。依田とは年齢も入段も同じで、独身時代はよく遊んでいた仲だ。

 黒15までの右辺の姿を見て、みなさんはどう感じるだろうか。依田は、「長年の僕の勘では、黒が負ける構えなんだけどな」。大矢解説者が「腰が入っていないということは、ちょっとあるけれど……」というほど微妙なもので、まさに名人芸の域にある依田の感性を垣間見た気がした。

 大矢解説者が感心したのは、黄の黒19、21の打ち回しだ。先に黒21とコスミツけると、当然白は23とノビてくる。そこで先に黒19と肩をつき白20に押される犠牲を払ったことで、黒23のたたきに回ったというのだ。白22で23にノビるのは、黒Aのオサエ、白B、黒Cの切りで、白のほうが苦しそうだ。

 次の一手、珍しく依田は方向を誤る。

(内藤由起子)

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