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黒三村智保  九段   対   白張栩  碁聖

朝のハプニング

2007年09月07日

 午前10時、開始のブザーがなっても、上座は空いたままだった。数秒遅れて、「ふー」と肩で息をしながら張が姿をみせた。「失礼しました」と一礼して着座する。

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棋譜

 第33局から掲載している8月2日の最終ラウンド一斉対局。東京ではこの日、事故のためJR線が遅れた。「40分遅れとの情報もあります。みんな間に合うかしら」と棋院職員が忙しく各対局室を見回っていた。

 日本棋院本院は市ケ谷駅にほど近い「帯坂」の途中にある。歌舞伎で名高い「番町皿屋敷」のお菊が髪を振り乱し帯を引きずって走ったとされるこの坂を、張は駆け上ってきたに違いない。

 はて、お菊は坂道を上ったのか下ったのか。一瞬、そんなことを考えていたら、三村の黒1に、張は間髪入れず白2と打ち、「失礼します」と席を外した。汗をぬぐいに洗面所へでも行ったのだろう。すでに名人挑戦権を手にしている張と、残留の決まっていない三村との一戦は、こうして慌ただしく始まった。なお遅刻は1分とカウントされ、倍の2分が白2の消費時間にあてられた。

 布石のポイントはまず白6。一間高バサミは張の好きな手で、必ず今期の七番勝負でも打たれると予想しておく。黒13の引きではAとハイ、白13とハネ出す進行が多い。続いて黒はBかCかを選択する。三村は別の道を選び、白16までに黒17のシマリを急いだ。

 黒19、21で白22のハネを誘って黒23とツケる。先に仕掛けたのは三村だった。

(伊藤衆生)

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