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< 第32期名人戦七番勝負第5局 観戦記 > 鈍と鋭2007年11月23日 名人の着手がおかしい。リズムが悪い。検討室にこんな雰囲気が漂ってきた。うまく表現できる言葉は見当たらない。なんとなく、黒の着手は「鈍」な感じがする。
黒57と大きく、威勢よく広げていったのに、白58には黒59とおとなしい。プロはこんな利かされを嫌うものなのに。 左辺黒61は実益を放棄したに等しい手。このノゾキを保留して黒63とオサえておけば黒Aのカミ取りが先手になる。 坂井「黒61のノゾキを決めたのは眼形を奪う意味ともう一つ。左辺の白を攻める展開になってからでは黒61に白62とツイでくれない可能性があるのです。白Bとツケて、値切られるかもしれません。中央白を小さく捨てられるのを高尾さんは嫌いました」 挑戦者は「鋭」をイメージさせる着手が目立つ。とにかく先へ先へ、フットワーク巧みに進む。白60にハネて先手で黒の渡りを拒否。すぐさま白64、66とドライに決める。左辺黒にもう攻めは利かないとの判断に基づいている。右下白68は20目を超える価値。白72まではうなずける。しかし白74とは予想も想像もできない。白CやDの味をみずから消して、右辺侵入の手がかりをなくしている。 坂井「心理が読み取れます。少なくとも形勢が苦しいとは感じていない。形勢がよければ不確定要素をなくすことがゴールへの近道ですから」 「鈍」の高尾は形勢をどうとらえていたのか。間もなく盤上にはっきり現れる。 (松浦孝仁) |
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