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< 第32期名人戦七番勝負第5局 観戦記 > 後悔か自重か2007年11月23日 名人が「1日目でいちばん後悔した。カド番を意識した」という黒83。黒85で白一子をのみ込んだとはいえ、不安定だった左辺白を84と先手で補強されたのだから、厳密には「後悔していい」一着かもしれない。しかし、あとのない戦いなら黒83、85の構想こそ相手にプレッシャーを与えられると思う。
その相手は終盤にめっぽう強い張栩。彼に、たとえ細かくても明確なリードを与えてヨセに入ったら、まず逆転できない。通常、形勢判断は地、厚み、攻め、石の強弱などをトータルで勘案する。しかし、対張戦においてはあてはまらないのではないか。 名人らしくいくなら、黒83でA、白B、黒87だ。本人もこう打ちたかったという。でも、打たなかった。これが答えなのだ。名人の勝負師としての本能か、あるいは体中の細胞が、「実利にウエートを置け」と騒ぎ出し、黒83を打たせた。 黒83を決断させた要素はもうひとつ。それは現時点の形勢だ。名人も形勢に自信があった。ということは、黒83は自重と書くべきか。 両者とも形勢に自信あり。判断のズレは下辺にあったと考えるのは強引だろうか。やがて起こる下辺の攻防で、名人には「妙手」が見えていた。 白86はさすがの一手。いきなり白87に迫りたくなるが、黒86、白C、黒Dと抵抗されて困る。コウは黒が強そうな碁形。抜き込まれると黒Eの心配も出てくる。黒87と備えれば、白88、90が継続手段だ。 (松浦孝仁) |
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