< 第33期名人戦挑戦者決定リーグ戦第7局 観戦記 > 井山登場2008年02月29日 開始15分前、井山裕太は通い慣れた日本棋院関西総本部の対局室に姿を見せた。ハンガーにコートをかけ、お茶を用意して席につく。いつもの手順で淡々と盤に向かったが、心の中では大いに期するものがあったろう。
いよいよ期待の18歳、井山が名人戦リーグに第一歩をしるす。初戦の相手は、関西の大先輩、山田規三生だ。山田が入段した89年に、ちょうど井山が生まれている。 黒番の井山は、黒1の小目から5とシマって堅実な立ち上がりを選んだ。黒7のカカリに、ハサミとはいえないゆるい白8で、山田は急戦を避ける。黒9からツメたのは、11のハサミから絶好の15にまわろうという作戦だ。 山田は1分の考慮で白16とすぐ消しに向かう。「もう一手、黒に囲わせてから行くのもありますが、先制攻撃ですね」と解説の石田篤司九段。 黒17と追って19と肩をつくのは、もたれ攻めのお手本だ。素直に白Aと受けるのは黒Bのツケがまさにぴったり。白は20にツケて機敏に技を返す。黒25にツガれて部分的には悪いが、「白26にトベれば白も満足」と石田解説者。 白28のトビまで、バランスのとれた分かれになった。気になるのは黒19の一子。これが働くかどうかが当面の焦点だ。 黒29のカカリに山田は白30と受けたが、手を抜いて白Cへトンで、19を立ち枯れにするのも立派な着想だった。 ここで昼休憩。次の一手、井山は悩んだに違いない。 (内藤由起子) |