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黒高尾秀紳  本因坊   対   白依田紀基  九段

クラシック

2008年03月21日

 作務衣(さむえ)姿の依田紀基が席につくと同時に、信玄袋からクルミの実を取り出した。昔から行われてきた指と手のひらを使う健康法のためで、脳の活性化にいいという。最近でこそやる棋士はほとんどいないが、記者が新米だった三十数年前は、多くのベテラン棋士が片手で2個のクルミをあやつり、軽く乾いた音をさせていたのを思い出す。

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棋譜

 これを復活させた依田、しかし手つきがあやしく、音もうまく出ない。見ると、グラブのような手で3個のクルミをこすり合わせていた。

 小道具のクルミがクラシックなら、四隅の小目に総ガカリもクラシック。星打ちの多い現代布石では、かえって新鮮に映るから妙だ。

 白10に25分。きょうの依田は慎重である。無理もない。いきなりの2連敗は挑戦者を狙う身には予定外。ここで敗れるようだと、望みが断たれるばかりか、早々とリーグ落ち候補だ。

 黒15までは40年ほど前に流行した定石。昨年の名人戦挑戦手合で張栩が試みて以来、復活のきざしを見せている。

 高尾紳路(秀紳)の黒19のトビが目新しい。定石通りAとヒラいても悪いわけではないが、白Bとツケて上辺を大きくされるのを嫌ったのだろう。白20に黒21以下を惜しみなく決め、この幅なら上辺を白地にさせても腹は立たない。黒29とハサみ、左辺に広がる夢を大切にしたのである。

 「左下は絶対あいさつできないと思った」と依田。

(春秋子)

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