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< 第33期名人戦挑戦者決定リーグ戦第31局  観戦記 >
黒 井山裕太  七段   対   白 小林覚  九段

必須条件

2008年8月15日

【黒中押し勝ち】105手完

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棋譜  226ツグ(33)

 小林は白68(7の九)を境に別人のように乱れた。黒69(9の九)のノゾキでかわされて確かにそれまでのリードはふいになったが、立て直し不可能な差ではなかったという。

 潘「例えば、上辺の白76(11の二)で左下を79(3の十四)と受けておけば息の長い、難しい碁だったと思います」

 局後の検討は小林の嘆き節から始まった。「ここ(白68)で気持ちがなえちゃったよ。一手パスみたいなものだからね」。

 しかし検討が続くにつれ、トーンが変わってきた。「そうか。まだ難しいところもあったのか……」と。

 真実はどうあれ、これも井山の強さと見ることができる。小林の相手が井山ではなかったら、こんなに早くあきらめただろうか。

 「いかに早く、相手にあきらめさせるかもトッププロ必須の条件」といわれる。井山相手にこんなミスをしたら勝てるわけがないと、小林は思い込んでいた。小林ほどの棋士をこんな心理状況に追い込める打ち手は他に何人もいないだろう。

 1週間後、井山を追いかけていた山田規三生が3敗目を喫し、井山の名人位挑戦が決まった。張栩名人も、「敵をあきらめさせる」ことに関しては群を抜いている。どんな碁になるのだろう。記者は最近、そんな空想ばかりしている。

(松浦孝仁)

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