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< 第33期名人戦七番勝負第3局  観戦記 >
黒 張栩  名人   対   白 井山裕太  挑戦者

「名人戦」に挑む

2008年10月24日

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棋譜

 若手といわれている28歳の名人が、19歳に挑戦される心境はどんなものか。先輩や同世代としのぎを削り、前だけを見ていたのは昨日までのこと。史上最年少挑戦者というスターの出現で、追われる側の主役を演じなければならなくなった。心穏やかなはずはない。

 9月24日、岐阜県高山市。挑戦者の2連勝で迎えた第3局は、対局室に現れた名人に明らかに硬さがあった。青色の健康器具を握ったまま、なかなか離そうとしない。ツボを刺激するための突起のついたゴム製器具に、何度も力を込めた。

 挑戦者は静かに待っていた。挑戦という立場や星勘定の優位だけではちょっと説明のつかないほど、落ち着いて見える。前夜祭で語った通り「平常心」で臨めているようだ。

 午前9時、羽根泰正立会人が「時間になりました」と告げた。

 黒1から7は名人の好きな布陣。白8までは昨年の張―高尾紳路の名人戦第6局と同じ手順だ。白が変化する道はいくらでもあったのに、挑戦者はあえて名人の土俵で戦うことを選んだのだろう。それが「名人戦」という舞台にふさわしい戦い方であるとでもいわんばかりに。

 挑戦者の静かで強い意志表示だった。

 ならばと名人は黒9と過激にハサみ、序盤から一気に競り合いとなった。左辺黒17のカケに、白18と上辺に迫る。

(伊藤衆生)

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