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囲碁名人戦七番勝負第6局1日目ダイジェスト

写真封じ手を入れた封筒にサインする大竹英雄名誉碁聖

写真検討室の一コマ。中央が趙善津九段、右奥が孔令文六段、右手前がマイケル・レドモンド九段

棋譜拡大〈途中図〉先番・井山八段(67手まで)

棋譜拡大〈途中図〉先番・井山八段(65手まで)

図拡大〈変化図1〉先番・井山八段

写真対局室の掛け軸

写真第1着を右上隅に打ち下ろす挑戦者の井山裕太八段。右は張栩名人=30日午前9時、静岡県伊豆市

●○挑戦者の攻めか、名人のシノギか/孔令文の目●○

 黒67は地を稼ぎにいったのではなく、右辺から中央にかけての白の大石を遠くからねらった手です。もし、白が地でとことん頑張ると、黒が本気で大石を仕留めにいくでしょう。封じ手は、黒のツケに対して内側と外側のハネ、上ノビの3通りと予想されますが、この中でも恐らく真ん中の大石を意識した手になると思います。

 1日目の流れは左辺、右下隅でそれぞれ面白い分かれになりました。判断はとても難しいのですが、お互いに自信を持っていたと思います。白36と黒の様子を見た、昼食休憩後初めの一着で、思わぬ所から碁盤全体に及ぶ戦いになりました。中央で難しい競り合いが繰り広げられましたが、実戦の進行は黒が主導権を握ったと言えると思います。2日目は挑戦者の攻めが決まるか、名人がうまくシノいで得意のヨセ勝負に持ち込むかが注目されます。

◆名人、68手目を封じる

 午後5時36分、名人が68手目を封じて、1日目が終了した。消費時間は挑戦者4時間22分、名人3時間14分。

●○挑戦者、主導権握る?/孔令文の目●○

 黒57のノゾキに対して、白は素直に受けず、58とノゾキ返しました。ここで黒がツナげば普通ですが、実戦はさらに59とツケて反発しました。お互いに相手の言い分を通さない駆け引きです。黒には様々な利き筋があるので、白は中央でなかなか手が出せず、実戦は右辺で生きました。少しつらい格好なので、黒65と回って主導権取りに成功したと言えると思います。

●○難解な競り合い/孔令文の目●○

 挑戦者が黒41で少考し、その後は白54まで一気に進みました。ここでの戦いは色々難解な変化があり、お互い多くの変化を読まれたと思います。結果的に白は黒の右辺を割った上に中央に脱出しました。黒は右辺の黒地を破られた代わりに右上隅の白をいじめることができたので、地を損した訳ではありません。これからも中央での競り合いが勝負どころだと思います。

 どちらかというと白の方が薄く見えるので、個人的には黒の方がわずかに戦いやすいように思います。具体的には変化図1のように進むと、黒が面白いのではないでしょうか。

◆対局室の掛け軸

 対局室「山科」の床の間には「和敬清寂(わけいせいじゃく)」と書かれた掛け軸が掲げられている。茶道で重んじられる精神を表す言葉で、和やかに尊敬しあい、清らかで、どんな事態にも動じない心のことだ。隣の部屋には「鬼の宴(うたげ)」と題する、間仕切りのための几帳(きちょう)がある。酒と杯を前に置き、三味線を弾く鬼の姿などが大津絵で表現されている。

●○険しい戦い、互いに長考/孔令文の目●○

 挑戦者は57分の時間を投じ、黒37と反発しました。対して名人は白38、40の2手にそれぞれ20分弱ずつ使い、思わぬところでとても険しい戦いになりました。最初の勝負どころで、少しのミスも許されない場面だけに両者これからも慎重に打ち進めるのではないでしょうか。

●○名人、様子見の一手/孔令文の目●○

 再開後、名人はほとんどノータイムでした。右辺の様子を見た手ですが、なかなか気がつきにくい発想です。黒が下手に受けると、小技を一本とられかねないので、反発するか受けるのかが悩ましい局面です。挑戦者も意表を突かれたのではないでしょうか。長考するかもしれません。

◆対局再開

 午後1時になり、対局が再開された。名人は少考後、右辺に高く臨んだ。

●○挑戦者踏み込む/孔令文の目●○

 右下隅の変化は黒29で一段落し、白は30の三々を決めて、32のケイマと実利を先行する展開になりました。ここで、黒は右上隅の白14の左下にカタツキを予想していましたが、実戦は厳しく黒33と上辺に踏み込みました。この手は地を意識した頑張った手だと思います。挑戦者にとっては、つい最近棋聖戦の挑戦者決定戦で敗れてしまい、やはり大一番に負けたショックがあると思いますので、この名人戦の大舞台で何としても勝って勢いを取り戻したいところでしょう。いきなり激しい碁になったわけではありませんが、相場より踏み込んだ実戦の打ち方からは挑戦者の気合を感じました。

◆昼食休憩に

 午前11時58分、名人は席を立ち、正午に昼食休憩に入った。消費時間は挑戦者1時間44分、名人1時間16分。

●○右下での手所の応酬/孔令文の目●○

 黒は白の眼形を脅かしたいので、21と急所に迫りました。これに対し、白は手順を尽くして24の下ツケから28のぶつかりまででひとまずシノいだ格好です。黒ももう一着入れて一段落すると思います。途中、黒25では、すぐ出切る手も目につきますが、白が右辺の黒石にもたれて、かえってサバかれてしまいます。

 この分かれは僕の棋力ではとても判断できませんが、お互いに自信を持っているのではないでしょうか。

●○焦点は右辺に/孔令文の目●○

 左辺の最初の変化は互いに穏やかな分かれとなり、焦点は右辺へと移りました。白は左辺の黒を中央に進出させにくくして、味を残しながら手を抜きました。

またじっくりとした布石の組み直しになると思いましたが、挑戦者が黒17と隅の地を取りながら、白の根拠を奪いにいきました。ここでの攻防が注目されます。

◆静岡県での50回目の名人戦

 静岡県で囲碁名人戦が打たれるのは、この第6局でちょうど50回目となる。第1回は伊東市であった1976年の第1期名人戦第5局で、この時は今回の立会人の大竹英雄名人(当時)が石田芳夫挑戦者(同)に勝ち、4勝1敗で防衛を果たした。鬼の栖(伊豆市)での名人戦は今回で12回目で、このうち、張栩名人は4回に登場。2004年は依田紀基名人(当時)、05年は小林覚挑戦者(同)、07年は高尾紳路名人(同)に、いずれも勝っている。

●○珍しい布石/孔令文の目●○

 黒のケイマガカりに対して、白は一間高くハサミましたが、これは既に少し珍しい形です。さらに名人が白8と地に辛い定石を選択したのに対し、挑戦者の黒9も初めて見るハサミ返しです。布石の段階から未知の展開になったので、互いに慎重に打ち進めると思います。名人も珍しく、時間を使うのではないでしょうか。

●○七番勝負、佳境に/孔令文の目●○

 みなさん、おはようございます。第6局のネット解説を担当させていただく孔令文です。よろしくお願いいたします。

 名人が防衛にあと1勝と迫った第6局。名人はもちろん、この1局で決めるつもりでしょうし、挑戦者も当然ここで踏ん張りたいところです。いつも以上に気合がこもった一戦が期待されます。

 2人の共通点は読みに絶対的な自信がある点で、大局観はもちろんのこと、特に手所での戦いは碁界で一、二を争うと思います。

 5手目で挑戦者が小目にカカったので、早速局面が動き始めました。名人がどういう定石を選択するかが注目されます。

孔令文(こう・れいぶん)

81年生まれ。98年入段、07年六段。

◆対局始まる

 張栩名人(28)が3勝、挑戦者の井山裕太八段(19)が2勝で迎えた第33期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第6局が30日、静岡県伊豆市の「鬼の栖(すみか)」で始まった。名人が勝って防衛を果たすか、挑戦者がタイに持ち込むか注目の1局だ。

 定刻の午前9時、立会人の大竹英雄名誉碁聖が「時間になりました」と告げ、先番の挑戦者が第一着を右上星に打ち下ろした。

 対局は2日制で持ち時間各8時間。31日夜までに決着する。

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