阿含・桐山杯でプロに4連勝した洪マルグンセムさん(左)。右は大垣雄作九段
囲碁のアマとプロって、どのくらいの実力差があるのだろうか。日本棋院主催の阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦は、プロに交じってアマ強豪が互い先(ハンディなし)で戦える、現在唯一の公式戦。その成績をみると、アマはプロに対して4割以上の勝率を収めている。なかでも近年は、アマ名人の洪マルグンセムさんが、プロを次々と破って注目を浴びる。アマ強豪とプロの対戦は、実力だけでなくメンタル面が影響する側面もあるようだ。
阿含・桐山杯は現在の棋戦名になって10年目。アマ本因坊戦の入賞者ら20人がプロに交じって予選トーナメントに出場している。アマの成績は表のとおりで、10年間で137勝195敗と、堂々の結果を残している。
特に近年のアマ勢の健闘を支えているのが洪さんだ。初めて出場した06年には、当時名人戦リーグにいた潘善キ(キは王へんに其)七段を破って3連勝。今年は、鳴沢泰一八段、堀本満成初段、大垣雄作九段、山田拓自七段を破って予選Aの決勝に進出した。アマ勢初の最終予選進出なるか、と注目を浴びた3月17日の決勝は惜しくも山田晋次四段に敗れたが、その実力をプロに印象づけた。
勝った山田四段は「洪さんはとても強く、トッププロとも互い先から定先(コミなし)で戦えると思います。負けても仕方ないという気持ちもありましたが、普段より意気込んで打ちました。プレッシャーはプラスに働きました」と振り返った。韓国でプロを志したこともある洪さんを「別格」としながらも、「アマが勝ち進んで、プロ棋戦の本戦に出てしまうようなことには抵抗がある」とも語る。プロ側、意地の一勝だった。
互い先でプロと渡り合った洪さんは、トッププロとトップアマの実力差を「定先から先逆コミ(黒のコミもらい)の間」とみている。ただ、互い先で圧倒的に不利かといえばそうでもないという。「定先では逃げの気持ちになるが、互い先ではコミを出すために戦おうという意識になる。結局、互い先ならば互い先の、2子局ならば2子局の碁になる。人間って、そんなに強くないんです」
プロとアマの違いについて、洪さんは「碁にかける厳しさ」を挙げる。「プロは毎週のように戦っていて、生活もかかっている。集中力を持続することができます。アマの真剣勝負は年に数回しかなく、勝ち続けるのは大変です。でも、阿含・桐山杯のような機会が増えれば、アマがもっと勝てるようになるのでは。僕はいつか、本戦に出場したいと思っています」(伊藤衆生)
■「大事に打つプロ アマは逆に気楽」
アマ強豪の指導経験の多い石田芳夫九段は、阿含・桐山杯の成績を、「ほどよい結果」とみる。「勝敗は、プロとの当たり方にもよります。プロにも実力差はありますから。ただ、予選システムの変更で、03年以降は高段プロとも当たるようになった。最近はアマが頑張っているといえるでしょう」
トッププロとトップアマの手合割は「だいたい2子」と、洪さんよりも厳しい判定。毎年ハンディを変動している「プロアマ本因坊戦」が、2子局近辺で落ち着いているためという。
「アマとプロの対局はメンタルな部分が大きく影響します。プロが互い先で負けるのは大事に打ちすぎるから。アマは逆に気楽です」と石田九段。03年には元アマ名人の菊池康郎さんがトップ棋士の柳時熏七段(当時)を破った。「ああいうのはニュースになっていいですね。アマに負けて発奮する若手プロも出てくるかもしれません」
阿含・桐山杯アマプロ戦
年 アマ成績 初戦突破
99年 10勝17敗 9人
00年 21勝18敗 12人
01年 16勝20敗 6人
02年 11勝20敗 6人
03年 11勝20敗 7人
04年 15勝20敗 10人
05年 11勝20敗 7人
06年 17勝20敗 9人
07年 8勝20敗 6人
08年 17勝20敗 9人
(アマ同士の対戦は除く)