第33期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)が4日、青森市で開幕する。名人4期目をめざす張栩名人(28)に名人戦史上最年少の井山裕太八段(19)が挑む。囲碁界の若き王者・張名人がもっと若い10代の挑戦者を迎え、タイトル戦史上、例をみない注目の対決となった。「最強」の呼び声高い張名人か、10代パワー全開の井山か。決戦を前に両者の意気込みを聞いた。
■戦って強くなれる修行の場−張栩名人
井山さんとは近いうちに大きな舞台で打つことになると思っていましたが、こんなに早く戦うことになるとは。「負けたくない相手」の一人ですね。
3年前の初対戦で負けたのは悔しかった。彼がそのまま優勝してしまったものだから、ずいぶん周りに言われました。成長途中で、打つたびに強くなっている。打っていて本当に強いと実感します。今は自分の方が強いとは思っていません。最近は自信がついてきたのでしょうか。どこか雰囲気に貫禄(かんろく)すら感じます。
若い世代との対決に戸惑いがないとは言えませんが、大舞台での勝負は楽しみでもあります。関心の集まる勝負になるでしょうけれど、それを楽しむくらいの気持ちで臨みたい。井山さんと戦うことで、僕もまた強くなれる。最高の修業の場です。
今年の僕は、碁の内容も成績もおおむね納得できるもので、いい流れに乗れていると思っています。7、8月は計20局(ネット棋戦3局含む)も打ちました。手合はすべて勝ちたいので、スケジュールが厳しくなるのは覚悟の上。体調管理には気をつけたい。
七番勝負は3局負けても終わりじゃない。だから、負けることを恐れずに自分の碁をのびのびと打ちたい。いい戦いが見せられるんじゃないかと思っています。そして、結果も残したい。
■最高の舞台、打ちたい手で−井山裕太挑戦者
七番勝負は棋士にとってあこがれの舞台です。今までの僕の戦いの中で、おそらく最も注目される戦いになる。開幕へ向けて、楽しみな気持ちが大きくなっています。
張名人は入段(プロ入り)したときからの目標です。初対戦では運良く勝たせていただきましたが、その後5連敗。地力の差を痛感しています。とにかくスキがなく、こちらが少々優勢でもまったく気が抜けない。ほかの誰と打つよりも気合が入ります。最近、ネット棋戦(非公式戦)で久々に勝つことができました。
2日制は体力面や精神面がどうなのか、やってみないと分かりません。対局中に一晩過ごさなければいけないので、ちゃんと眠れるよう切り替えたい。8時間の持ち時間も未知の世界です。
相手が強いというのは分かっているけれど、自分がミスをしなければ簡単には負けないと思っています。だから、力を出し切ることに集中したい。
関西の棋士が名人に挑戦するのは初めてということもあって、ファンからたくさんの声援をいただきます。期待してもらえるというのは幸せなこと。プレッシャーに感じることはありません。
最高の舞台で戦えることを幸せに感じながら、普段と変わらず「打ちたい手」を打てればいいと思う。もちろん、やるからには勝ちたいです。(伊藤衆生)
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張栩(ちょう・う) 台湾出身。林海峰名誉天元門下で入段は14歳。03年の本因坊位獲得で最年少九段に。04年に名人位を奪取し、史上最年少の24歳で名人本因坊となる。05年、世界戦初優勝、名人防衛を果たす。06年に高尾紳路挑戦者に名人位を奪われたが、昨年奪還に成功して3期目の名人位獲得。今年8月には山下敬吾挑戦者を退けて碁聖3連覇。妻は小林泉美六段。日本棋院東京本院所属。
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井山裕太(いやま・ゆうた) 大阪府東大阪市出身。石井邦生九段門下で入段は12歳。05年、阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦で16歳の公式戦最年少優勝を飾り、四段から最年少七段へ。07年、棋聖戦リーグ(17歳)、名人戦リーグ(18歳)にいずれも最年少で参加。同年、新人王も獲得する。今年7月、七大タイトル戦史上最年少で名人挑戦者に決まり、最年少八段に。日本棋院関西総本部所属。