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2012年10月23日15時42分
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初手天元、危険な魅力 映画「天地明察」のシーンに挑む

図:【第1局】黒・瀬戸七段―白・三谷七段 1―61手、以下略  55コウ取る(47)拡大【第1局】黒・瀬戸七段―白・三谷七段 1―61手、以下略  55コウ取る(47)

図:【第2局】黒・大澤四段―白・大澤初段 1―39手、以下略拡大【第2局】黒・大澤四段―白・大澤初段 1―39手、以下略

 【伊藤衆生】囲碁は陣取りゲーム。陣地を囲いやすい隅から打つのが一般的だ。ならば、映画「天地明察」の主人公・安井算哲よろしく、第一着を広い碁盤のど真ん中「天元」に打ったらどうなるか。そんな企画にプロ棋士が挑戦した。「初手天元」は乱戦必至の作戦のようだ。

■常識通用しない激戦

 安井算哲は江戸時代の実在の棋士。日本独自の暦をつくった天文暦学者でもあった。算哲が「御城碁」で本因坊道策を相手に初手天元を試みた史実は有名で、映画でもそのシーンが登場する。20日、東京・目白で開かれた「IGO FESTIVAL2012」で、1手を20秒未満で打つ、初手天元の早碁が公開で打たれた。第1局が瀬戸大樹七段(黒)―三谷哲也七段、第2局が大澤奈留美四段(黒)―大澤健朗初段。白番の対応の仕方によって対照的な展開となったが、どちらも戦いは激しかった。

 第1局、瀬戸七段は天元に続く黒3、5で上辺一帯を立体的に浮かび上がらせた。白に侵入してもらって攻めるのが狙いだ。三谷七段の白6以下が変則的。「黒7を誘って白8、10とくつろげる。天元の黒石を働かせないようにする作戦でした」という。

 「天元の価値がどうなるかが焦点」と第1局の解説を担当した高梨聖健八段。黒はなんとしても天元の一子を戦いに参加させたい。通常、右辺黒29と打ったならば次に右下黒32とカカって自身の安定を図るところだが、逆の31から打ったのはそのためだ。部分的な常識は通用しない。

 この後、瀬戸七段が右下白に襲いかかって天元は働いたが、三谷七段の逆襲が奏功。白番中押し勝ちに終わった。

 第2局は大澤四段の天元に対して大澤初段が近くに白2と応じ、いきなり空中戦に。「最初、何のゲームをしているのか分からなかった」と大澤初段が笑えば、大澤四段も「とても自由。楽しくて子どもの頃を思い出した」。戦いは中央から辺や隅へ。常識とは逆の手順で戦いが進む。

 白24、26のツケ切りに、大澤四段は天元を犠牲にして厚みを築き右上黒39にまわる。天元の一子を「捨てる」というかたちで活用した。結果は白番4目半勝ちだった。

■有力な手 でも難しい

 初手天元は現在でもごくまれにプロの公式戦で打たれているほか、若き日の山下敬吾名人や、古くは呉清源九段らも試みてきた。だが、打たない棋士が圧倒的に多い。

 三谷七段は「使いこなすのが難しい」、大澤四段も「有力な手。シチョウが有利になりますしね。でも、その後どう打っていいのか」と語る。過去の経験が生きない領域なのだろう。「勝たなければいけないので怖さはある」と大澤初段。高梨八段も「プロは生活がかかっているのでなかなか打てない」と観客を笑わせたが、単なるユーモアではなさそうだ。

 瀬戸七段は「公式戦で試すかどうかはともかく、じっくり具体的な着手や構想を練りながら打てたら、楽しいだろうなと感じた」。プロにとって初手天元は、危険だが魅力的な世界なのだ。

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