【伊藤衆生】王座を奪取して史上最多タイとなる五つのタイトル(本因坊、天元、王座、碁聖、十段)を保持した井山裕太(23)。五冠達成は、ただ一人の達成者だった張栩(32)を破ってのものだった。張の偉大な記録に肩を並べた井山は、控えめに喜びを語りながらも、さらなる飛躍へ意欲をみせた。
■勝率8割、群を抜く
井山は挑戦中だった第60期王座戦五番勝負で張に3連勝した。1977年に現行の七大タイトルがそろって以降、五冠達成者は2009年4月の張(名人、十段、天元、王座、碁聖)だけ。22日、井山は棋士になって11年目という速さでその記録に並んだ。
今期の王座戦は、4連覇中の張が防衛して「名誉王座」の資格を得るか、井山の五冠達成かという大勝負。井山は張の故郷・台湾で開かれた2連戦に勝ち、勢いに乗って一気に奪取した。「どの碁も苦しい時間が長かった」と内容には必ずしも満足していないが、「今の僕の力は出ている。相手が張さんということもあって、盤上に集中することだけを考えた。それはできた」とも話した。
20歳だった3年前、第一人者の張からタイトルを奪って史上最年少名人となった井山が、いままた張を倒すことで記録を打ち立てた。
五冠当時の張と比べると?という取材陣の質問には「張さんは手がつけられないほど強いという印象があった。他の人と戦っているのを見ていても負ける感じがなかった。勢いもそうですし、内容も」と話した。08年秋、張は19歳・井山の挑戦を受け、苦しみながら名人を防衛。その後5カ月でタイトルを三つ増やすことになる。張を勢いづけさせたのが井山だった。
井山は「自分はまだまだ及ばない」と謙遜。しかし「比べていただくのはありがたいけれど、そんなに意識はしていない。自分の碁を打ち続けるだけ」とつけ加えた。
今年は48勝12敗、勝率8割。相手のほとんどが一流クラスという中で群を抜く成績だ。「どのシリーズ(タイトル戦)も余裕はなかった。余計なことを考える暇もなくというか、(五冠は)『気がついたら』という感じ」という。
■年初に再戦、六冠狙う
近年は、より過激に激しく戦うことが多く、安定感に欠けるという声もある。だが本人に迷いはない。「今はこれが自分のスタイル。変えようとは思っていない。ハラハラさせて申し訳ないとは思っていますが、根気よくみていただければ」とむしろ自信をのぞかせた。
現在2連勝中の天元戦五番勝負(防衛戦)が年内最後のタイトル戦になる。そして年初には、再び張に挑む棋聖戦七番勝負が開幕する。前人未到の六冠を待ちわびるファンの声も届く。「まずは天元戦を頑張ってからの話ですが、棋士人生でそうそうあるチャンスではない。精いっぱい自分のベストを尽くしたい」
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王座を失冠した張は棋聖のみの一冠に後退。残るタイトルの名人は、山下敬吾(34)が保持している。
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