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  第8回図書館総合展 市村友一アエラ編集長講演採録(2) 「雑誌」と「ネット」のメディア融合
2006年12月15日
■雑誌のネット利用
●インターネット元年。パソコン、デジタル雑誌の隆盛
インターネット元年は1995年だと思います。ウィンドウズ95が発売された年ですが、この年を象徴する出来事はインターネット閲覧ソフトを開発したネットスケープの上場です。つまり、普通の人がインターネットを見られるようにした会社が一世を風靡し、マイクロソフトを慌てさせます。この後、紙媒体がネットを利用する幸福な時代がありました。パソコン雑誌やデジタル雑誌がたくさん出て、しかも売れたことが代表的な事例でしょう。
●ネットからの情報収集
最近でも、雑誌や書籍がネットから情報収集をして商品化するビジネスは続いています。代表的なのは、「2ちゃんねる」から出てきた『電車男』や、東京農工大の生協職員が掲示板の質問に答えるという『生協の白石さん』です。いずれもネットで話題になったことから書籍化され、ベストセラーとなったものです。そのほかにも、ネットで面白い話を見つけて、追加取材をして週刊誌に載せるということは当たり前になっており、「AERA」も日常的にやっています。
●ホームページでのアピール。会員サークルの構築
紙媒体のネット利用という点では、ホームページによるアピールと、それを通じて会員サークルを構築し、いろいろなビジネスにつなげていくということがあります。「AERA」も「アエラネット(AERA-net)」(http://www.aera-net.jp/)というホームページを持っています。最新号の紹介や編集部のコラム、1行コピーのコーナーなどがあり、記事の一部を読んでもらって、興味を持ったら買ってくださいということをやっています。最近は「アエラ携帯サイト」(http://kmaga.jp/aera/)というものも始めました。ここでも、「AERA」との親密度を高めてもらうため、会員だけが見られるページを設けたりしています。
■インターネットの新潮流
●Web2.0の発想。インターネットゆえのビジネスモデル
しかし、時代はその程度ではおさまらなくなってきています。つい最近までは、現実世界にあるビジネスを置き換えることがネットビジネスの主流でした。例えば楽天は商店街をインターネット上に構築したわけですし、証券会社は今まで電話注文などで取り扱っていたものをインターネットからも注文できるようにしたわけです。旅館の予約や航空券の手配などもそうです。ところが今は、インターネットだからこそできるビジネスやサービス急速に広がってきています。それがWeb2.0の発想です。
例えば今、インターネット検索を引っ張っているのは、Googleという会社です。これはまさにWeb2.0の発想を体現する企業だと言えます。彼らは、単にネット上にあるものを検索できるようにするだけでなく、例えば世界じゅうの図書館の本をすべてデジタル化して検索できるようにするなど、とんでもない発想で事業を進めています。我々にとって脅威なのは、インターネット広告が従来のバナー広告からどんどん進化していることです。何かを検索すると、その言葉に合わせた広告が出るという「検索連動型広告」や、ホームページの内容に合わせた広告が出るという「コンテンツ連動型広告」などです。我々の雑誌は「きっとこういう人が読んでいるだろう」ということを見越して広告主が広告を出してくれるわけですが、実際のところはわかりません。それよりも、例えば旅行したいと思っている人に旅行の広告を出したほうが効果は高いわけです。「AERA」は非常に広告が映える雑誌として高い評価をいただいているのですが、非常にセグメント化されたピンポイントの効果ということでは、インターネットの連動型広告にはかないません。
アマゾン・ドットコムも、本を売るという現実世界の置き換えから、Web2.0の発想にうまく移行している会社です。彼らは、自分たちの商品データやサービスの仕組みを開放しました。つまり、だれもが自分のホームページでアマゾン商品の紹介や販売が出来るようにしたわけです。そこを経由して商品が売れればホームページ開設者もアマゾンも潤う。リンクも広がって検索すると必ず上位に来る。こうした「開放性」がWeb2.0の特徴です。
●携帯電話のインパクト
さらに、日本で忘れてならないのは、携帯電話のインパクトだと思います。10数年前には、朝、電車の中で新聞か週刊誌を読んでいる人が必ず何人かいましたが、今は携帯電話を見ている人のほうが圧倒的に多くなっています。これからどんどん携帯電話が魅力的になってきますと、雑誌はますます買われなくなってしまいます。携帯電話の利用については、一般企業も少しおくれている気がしますし、我々メディアはもっとおくれています。「AERA」の携帯サイトも、ビジネスに結びつくところまではいっていません。
■雑誌とネットの融合は可能か
●新しい取り組み
今、業界内で起こっている話を少しご紹介します。「LEON」という男性向けファッション誌の編集長だった岸田一郎さんという方が今、「@zino(アット・ジーノ)」というプロジェクトを始めています。「LEON」は月1回発行でしたが、それでは最新情報をどんどん更新できないわけです。新しい商品が出てきたとき、すぐに売り手であるファッション業界につながるようにするために、ライフスタイル・ウェブマガジンというホームページを中心に情報提供し、それを紙媒体としても出すという取り組みです。まだプレサイトの段階ですが、非常におもしろいホームページだと思いました。
それから、全ページにQRコードをつけたフリーペーパーというものもあります。QRコードとは、いちいちURLを打ち込まなくても、携帯電話でカシャッと撮るだけでそのサイトに行けるというものです。例えば伊藤忠グループなどがやっているのは、本屋さんで渡すフリーペーパーで、本や映画などの紹介にすべてQRコードがついており、そこからすぐに関連したサイトへ行けるようになっています。このQRコードの利用度は非常に高く、「AERA」としてもその活用の可能性を考えています。記事ごとにQRコードをつけておき、そこから関連したサイトに飛べるようにしたり、次の雑誌が出るまでの間をフォローしたりできないかということを考えています。ただ、コスト対効果がわからないという非常に悩ましい問題もあって、課題として検討している段階です。
ジャーナリズムの世界では、オーマイニュース(OhmyNews)というものがあります。韓国で始まった市民記者によるインターネットだけのメディアです。つまり、商業的な新聞社や雑誌社の記者ではなく、市民が登録してホームページに記事を書き、掲載された場所によって小遣い程度のお金が入るという仕組みです。韓国での人気は高く、今の大統領が当選したムーブメントをつくったとも言われています。日本でも先ごろ、ソフトバンク傘下で始まりました。しかし、今のところ我々が驚くような記事はあまり載っていません。
●Web2.0時代のビジネスモデルは見えず
これまでのメディアは基本的に「1対多」でした。つまり、放送局や新聞社、出版社などが何かをつくり、たくさんの人に届けるという仕組みで、1に当たるところがビジネスとして成立していたわけです。しかし、インターネットは「多対多」の関係になります。だれもが情報発信できるわけです。例えば教育問題であれば、今までは雑誌記者や新聞記者が教師やら文科省やら識者やらに話を聞いて、それをまとめて提供していたわけですが、その人たちが自分で情報発信するようになると、それは間接情報でしかなくなります。つまり、ステータスが落ちるわけです。
これまで申し上げてきたように、雑誌メディアがインターネットを活用することは今後も続くと思いますが、雑誌とネットの全面的な「融合」については、私は悲観的です。例えば、「AERA」は通常360円ですが、仮に20万部売れれば、それだけで毎週7200万円の売り上げが立つわけです。それに広告が入ります。「AERA」がネットに移行しても、こうした規模が維持できるとは到底考えられません。言葉をかえれば、雑誌をつくっている側の人間が発想しても、なかなか新しいビジネスモデルは出てこないのではないかということです。希望があるとすれば、例えばGoogleでは、基本的にこれを調べたいと思う人が調べて、初めて何かしらの形が出てくる機能を提供しているわけですが、紙媒体では、とりあえず「AERA」を信用しているし、いろいろな情報が載っているから、360円を出しても毎週買おうという人は少なからず残ると思います。そこはパッケージ商品としての強みです。しかし、今までのように部数をふやしていくことが可能かといえば、私は非常に悲観的です。融合が可能になるとすれば、ネットの世界の人たちが考えつく全く新しいアイデアをいかにうまくとらえていくかにかかっているというのが、紙媒体の編集長としての率直な感想です。
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