|
図書館のあり方が変わるなか、図書館司書に求められる役割も変化しつつある。インターネットを使って情報を収集し発信する能力や、新しいサービスを企画・提案する力、限られた予算で効率よく図書館を運営する力も必要とされるようになってきた。こうしたニーズにこたえようと、デジタル時代に対応する図書館の「プロ」を育てる動きが広がっている。
◆社会人向けに都心で夜間大学院
筑波大学図書館情報メディア研究科は4年前から、現役の図書館司書や職員が学べるように、交通利便性の高い東京都心の教室で、平日夕方に授業を行う「夜間サテライトキャンパス」を開講している。茨城県つくば市の教室とテレビ電話回線でつなぎ、教授は隔週ごとにそれぞれのキャンパスに顔を出す。
東京キャンパスに通う学生のほとんどは現役の図書館員。浦安市教育委員会生涯学習部の常世田良さんもその一人だ。浦安市立中央図書館の前館長であり、最先端の図書館のあり方を提案し続けてきた常世田さんは、夜間大学院で学ぶ理由について「政策を実現するためには、他の部署や施策と予算の奪い合いになる。図書館施策には予算も人もつきにくいのが現状。その理由を研究し、数字的に立証することで、『戦う道具』を増やしたい」と話す。
財政難で予算が削られるなか、いかに企画を提案していくか。同大学の薬袋秀樹教授は、現代の図書館員に求められる大切な能力の一つとして企画立案力を挙げる。「大学院で論理的・実証的な手法を身につけ、現場で説得力のある発言や提言をできるようになれば、業界全体を動かす力になる」と話す。
◆ケーススタディ方式導入
デジタル資料の導入や地域の情報発信拠点としての役割、「ビジネス支援」などの新たなレファレンスサービスへの期待なども、図書館員の再教育ニーズを後押しする。慶応大学も今春、そうしたニーズの高まりを受け、社会人向けに図書館・情報学の夜間大学院を開講した。今年度は、大学や公共図書館の現役司書ら14人が学んでいる。
電子図書館サービス、民間委託、資金調達、図書館のホームページ設計、著作権制度と図書館……。講義要綱の中には、図書館が直面している課題が並ぶ。同大の糸賀雅児教授は「紙媒体と電子媒体を使いこなし、地域に必要な情報を提供できるような『ハイブリッド(混合)型ライブラリー』が今後は求められる」と話す。従来の図書館サービスにない、新たな情報の付加価値をつけた図書館。カリキュラムは、そうした図書館を実現するため、情報技術についての知識や技術と同時に情報収集力や企画力、予算を獲得するマネジメント力などをつけてもらう狙いで組まれている。テーマに応じて、図書館関係者以外の専門家をゲストスピーカーとして呼ぶことも多いという。同大の高山正也教授は「学生は現場のベテランばかり。こちらが何かを教えるというよりも、それぞれの課題を挙げてもらって解決策を議論するケーススタディ方式を重視している」。
◆背景に新規採用現象も
新しい知識を身につけるための短期研修も各地で開かれている。糸賀教授らが中心となって2001年に始めた「デジタルライブラリアン講習会」もその一つだ。毎年、大学図書館向けと公共図書館向けのコースを開講。隔週7回、計約25時間かけて最新動向やインターネット資料の活用・作成を身につける。県立図書館などからの要請で、福岡や静岡など地方でも開いており、すでに200人以上が学んだ。
市川市中央図書館司書の叶多泰彦さんは、この講習会後、さらに知識を深めるために大学院に入学した。5年程前、欧米の図書館を視察した際に新しい知識や技術を身につける必要性を感じた。「新規採用は抑えられる傾向にある。今いる自分たちが学ばなければ、図書館を変革できない」との危機感があるという。
全国公共図書館協議会の調査によると、貸し出し窓口の他にレファレンス専用の窓口を置く公共図書館は全体の4分の1にとどまっている。民間委託やPFI導入などで派遣職員を雇う動きが広がるなか、図書館の司書数はむしろ減少傾向にあると言われる。文部省(現・文部科学省)の協力者会議が2000年にまとめた「2005年の図書館像」は、地域電子図書館の機能充実に向け職員が知識・技能等を習得することが必要だと打ち出している。新たな図書館像にふさわしい図書館員をどう育てるか。情報拠点としての図書館を支える「プロ」づくりが、従来の司書の枠を超えて動き出している。
(2004/11/19)
|