大学図書館や公共図書館で、実際に「聞蔵」を使われている利用者のみなさんに、活用の仕方をお聞きしました。研究者、学生、図書館司書、ビジネスマン、人の数だけ、利用法が存在します。聞蔵シリーズは、利用者の「ほしい」にピタリとはまる記事データベースです。140年にわたる新聞情報の宝庫から、必要な情報がきっと見つかります。

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調査・研究に活かす
 
三重大学 大学院工学研究科(建築学)教授 菅原洋一さん

明治期の新聞記事を郷土史研究の資料に
伊勢御師邸を模型で復元

三重大学 大学院工学研究科(建築学)教授
菅原 洋一さん

東京朝日新聞 明治40年2月3日 朝刊広告 伊勢山田 三日市大夫次郎出張所「伊勢参宮募集」

東京朝日新聞 明治40年2月3日 朝刊広告
伊勢山田 三日市大夫次郎出張所「伊勢参宮募集」

 平成26年、三重に新しい県立博物館がオープンします。私はその基本展示の一画を占める「三重をめぐる人・モノ・文化の交流史」というコーナー展示の検討に携わっており、日本最大の宿泊施設だった「伊勢御師(いせおんし)・三日市大夫次郎邸」を模型で復元し、新博物館に設置するプロジェクトを進めています。

 伊勢神宮は三重県の歴史を語る上で重要です。中世末期から近世にかけて民衆の間で「お伊勢参り」が大流行し、日本全国から多くの参拝者が伊勢にやって来ました。特に江戸時代に隆盛を極め、関連産業も含めた経済規模は大きなものでした。

 当時の人にとっては一生に一度の大旅行。この旅を大いに楽しもう、そんな活気に満ちていました。「お伊勢さん」を目指した人々の行き来と、御師による諸国巡歴の布教は、地域間の文化的な交流も生みました。

 人気の背景には「伊勢御師」の活躍があります。御師は宿泊手配、参拝・観光案内、祈祷など、伊勢に押し寄せる参拝客の要望に応えた世話をしていました。日本全域への檀家拡大も活発に行い、伊勢信仰の普及に大きな役割を果たしたのです。明治時代には国家神道の流れの中で御師の直接の宗教活動は禁じられ、宿泊の便宜をはかるのみの活動に収縮していき、やがて時代の流れと共に姿を消しました。

 今回、模型復元する「三日市大夫次郎邸」は、江戸期はもちろん明治期に至るまで日本最大級の宿泊施設でした。最も繁盛していた江戸時代の姿を復元するための資料は、平面絵図や銅版画・石版画、写真など、御師邸がなお現存していた明治時代のものがほとんどです。これらを基に復元図をつくり、CG化し、写真や文献の記述と比較し修正するという作業の繰り返しが、正確な模型作りには必要です。それに加え、明治期の朝日新聞紙面データベースが、当時の状況を知る研究資料として役立ちました。

 このような「三日市大夫次郎邸」には、一体どれほどの人数が宿泊できたのかは、ずっと気になっていました。平面絵図を見ると座敷と広間を合わせて400畳弱です。座敷に面する畳廊下を座敷と一体に使う場合を想定すると、これが最大限の収容数になりますが、確信は持てません。さらなる資料を求め、「聞蔵II」で当時の紙面を検索してみました。

 「御師」「三日市大夫」「伊勢」「参宮」…と、思いつくキーワードで検索してみると、参考になる記事と広告が見つかったのです。まずは記者の伊勢訪問コラム。明治38年の紙面に「先づ行ったのは三日市大夫次郎の内(うち)で、(中略)いかにも大きな結構、台所の広いのには驚いた、五六百人はお宿いたしますといふ」という記述を見つけました。また、広告も役に立ちました。三日市大夫次郎は東京に出張所を設け、お伊勢参りのツアーコーディネートをしていました。三日市大夫次郎の東京出張所が出した「伊勢参宮募集」の広告には「五百名を一団体となして新橋より伊勢山田へ特別列車にて直行をなし…」とありました。三日市大夫次郎邸が500人という大人数を受け入れる規模や態勢を持っていたということは、これでほぼ確実なことだと分かりました。そのつもりで資料を見直すと、明治期の石版画には宿泊棟を2階建に建て増したものも見られ、三日市大夫次郎邸が江戸、明治期を通じて大規模な宿泊施設であったことについて、さらなる確信を得られました。

 この他にも、明治期になり形を変えていった御師についての関連記事などが、研究の資料となりました。

 「聞蔵II」の紙面データベースは、検索キーワードの書誌を開示しています。記事の書誌一覧を見て、付与されている他のキーワードで再び検索をすることで、関心分野が縦横無尽に繋がっていきます。データベース検索の強みを発揮できる、有用な機能だと思います。

 まとまった資料が残されていない歴史的な事柄については、一つ一つは断片的な記事であっても、新聞記事を時系列に並べることによって全体像に近づくことができ、あるいは今まで気付かなかった見方を教えられることもあります。このような使い方をしてみますと、新聞は実に面白いものです。

 過ぎた時代を考察し、地域の価値を明日に伝える。そうして平成の私たちも、時空を超えて歴史に触れることができるのです。

(2012年9月)

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