「中国では一人っ子政策が厳しく実行されているそうですね」と、日本人の友達から半ば好奇心から、半ば同情的に聞かれることが多い。私は「確かに都市部や四川省などでは一人っ子政策ですが、大半の省、自治区では二人っ子政策です」と答えることにしている。
一人っ子政策が正式に始まったのは1980年ごろだった。全世界の7%しかない耕地で世界の21%の人口を養うという厳しい現実に直面して、とにかく一党支配の力を生かして人口増の圧力を緩和しようとした。
しかし、中国には元々、「多子多福」の考えがあり、特に農村では労働力確保と老後のために子供、とりわけ家を継ぐ男の子を生むことが一大事だ。そこで一人っ子政策の実施は強い抵抗を受け、出産した女児を捨てたりする事件も多発した。
海外からの強い批判もあって、84年以降、少数の省と都市を除いて制限が緩和され、1人目が女の子だったら2人目も生んでいいことになったのだ。実際、この前、北京から車でわずか1時間半の山村で子供2人の家庭を多く見た。漢民族以外の少数民族には「出産の制限を奨励するが、強制はしない」政策がとられている。
現在の人口は12億6千万人だが、この人口制限策で3億人以上少なく生まれたとされる。「だれが中国を養うか」という中国の食糧供給問題を提起した論文を書いたレスター・ブラウン氏も、「中国はこの政策によって史上初めて大半の人々を、先例のないほど短期間のうちに、貧困から救い出すという功績をあげた」と評価している。
子供を自由に生みたい気持ちは痛いほど分かる。制限策のマイナスも大きい。制限からのがれて生んだ1500万人ともいわれる「黒孩子」(ヘイハイズ=戸籍のない子供)の問題がある。戸籍がないと教育や就職にも悪影響がある。
一人っ子は過保護に育てられ、社会性や協調性が欠けたり、家族の強い期待に耐えられずに自殺や暴力に走ったりする子が増えているとも指摘される。
最初の一人っ子世代は結婚適齢期を迎えている。大都市でも、一人っ子同士が結婚したら子供を2人生んでよい方向に近々緩和されるそうだ。ただ、中国で最大限に負荷できる人口は16億人と試算される。今のままだと、あと30年で15億人を突破してしまう。産児制限政策そのものはここ当分は継続されていくだろう。