中国の改革開放政策は、世界中に大きな衝撃を与えた。アジア・太平洋地域では特に関心を集め、活発な議論が展開された。とりわけ東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の反応は賛否両論に分かれ、歓迎と不安が交ざり合ったものだった。なぜならば、ASEANにとっては、好機であると同時に試練でもあると考えられたからだ。
ASEAN結成以降、投資や貿易などの域内協力はほとんど促進されてこなかったし、加盟各国は程度の差こそあれ、経済発展に行き詰まっていた。そこで、その重要な突破口として、新興工業経済地域(NIES)との経済協力が重視され、強化された。
しかし、その後、NIESとの経済協力にも限界が出てきて、中国の市場開放や世界経済への参入はASEANにとって経済発展の好機だと受け止められた。この22年間、中国との経済協力が着実に発展してきたことは、まさにこのことを物語っている。
その半面、ASEANは中国経済の国際化に脅威も感じていた。理由として、(1)日欧米の資本や企業が中国に流れていく(2)日欧米は中国との国際貿易を拡大し、ASEANとの貿易が相対的に縮小される(3)日欧米や国際金融機関の経済援助が中国に傾斜する、といった点があげられる。
これらの脅威はすべて現実となった。しかし、皮肉なことに、中国の改革開放政策の強化に伴い、ASEAN自身も中国への資本や企業進出を強化し、対中国貿易を促進するように努力した。
ASEAN各国の労働集約産業は特に対中国進出を1つの活路とみた。ASEAN各国の華人も対中国進出を推進した。日本との貿易拡大に限界を感じたことも背景にあった。
1992年秋、中国はさらに「社会主義市場経済」というスローガンを打ち出し、全面的な市場経済化にまい進することを宣言した。それを受けて、ASEANは以前にもまして中国との経済協力を活発化した。最も重要なことは、中国との経済協力の強化で、ASEAN経済が一層発展し、高度化することだ。
中国は今年、世界貿易機関(WTO)に加盟する予定である。中国経済の国際化がさらに本格的になるだろうが、肝心な問題は、国際市場で中国とASEANの競争が激化することだ。人民元の切り下げも予想され、そうなれば、日欧米やNIESの対中国投資が急増し、ASEANへの外資流入が激減すると考えられる。ASEANも外資導入政策を含めた経済対策や産業再編成を迫られるに違いない。