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今週のコラム
アジアと欧米の識者による様々な立場からの意見です
「古い日本」の良さに学ぶ
フェルディナンド・マキト
テンプル大学ジャパン客員講師
(フィリピン)

 最近、日本国内の「経済特区」構想が論議を呼んでいる。沖縄の金融特区をはじめ、「規制改革特区」「構造改革特区」などのアイデアが経済界や省庁から相次いで打ち出されている。目指しているのは、古いやり方からの脱却だろう。

 フィリピンにも経済特区がある。スービック、アンヘレスなど旧米軍基地からの転換を手始めに、各地に広がっている。しかしその狙いは、むしろ日本のこれまでのやり方を学ぶことにある。つまり、特定地域に税制や財政面での優遇政策を適用し、企業を誘致して経済の活性化をめざすのだ。

 その目標は、国全体が著しく成長しながら所得分配をかなり改善できた戦後日本型の経済発展である。残念ながら、フィリピンは成長も所得分配の改善も芳しくない。他の途上国同様、所得が富裕層に偏る一方で国民の多くはなお貧困に苦しんでいる。

 ポスト・マルコスのフィリピン政府は分権政策をとり、大都市に集中しがちな開発を地方にも展開させ、貧富の差の縮小を狙っている。その一環が経済特区の振興策で、輸出増や雇用確保の面で着実な成果をおさめ始めている。

 日本の「失われた10年」について語るとき、「日本のシステムはもう世界に通用しない」とよく言われる。確かに激変するグローバル環境のなかで日本も変わる必要はある。だが極端に走って、日本にはまるで良いことが何もないというような、アイデンティティー危機に陥ってしまうことの方がむしろ問題だろう。この危機さえ避ければ、対応は十分に可能なのに。

 日本が要らないというのなら、「古い」日本のシステムとそれを支えてきた中小企業を、フィリピンに移転してもらいたいくらいだ。フィリピンに今必要なのは、英米的な徹底した市場主義ではなく、果実が共有された成長を図る「古い日本」のようなシステムなのである。

2002年8月2日
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