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今週のコラム
アジアと欧米の識者による様々な立場からの意見です
市場化が進む中国のメディア業界
阮蔚(ルアンウエイ)
農林中金総研副主任研究員(中国)

 統制が厳しかった中国のメディア業界も、市場経済の衝撃を受けて、規制緩和に向かって動き出している。20年前にはわずかしかなかった新聞や雑誌、テレビ局は今や数十倍増えて、新聞は約2000種類、雑誌は約8700種類、テレビ局は362社、ラジオ局は約300局になっている。

 メディアが「春秋戦国」時代に入るにつれて、競争も激しさを増している。新聞を例に見ても、2000年までの5年間、約150紙が統廃合などで消えたのと引き換えに、その倍以上の新顔が現れている。

 その競争と変化の一端を、都市部のいたるところで見かけられる「報亭」(新聞スタンド)からうかがうことができる。日本のKioskよりも「ところ狭し」と並ぶ数多くの雑誌や新聞は、デザインも見栄えもグローバル化の波を追いかけ、先進国のものに似てきている。北京のある「報亭」を数ヶ月おきに覗いているが、毎回新顔を見かけることが楽しみにすらなっている。

 家電や自動車業界などと同様、中国のメディア業界は外資の参入により、競争が一段と激化している。香港系の鳳凰衛視(フェニックス・テレビ)が中国本土で既に4200万世帯以上の視聴者を確保している。メディア王ルパート・マードック氏のスターTVと米AOLタイム・ワーナーの2社が昨年11月、広東省沿海部で衛星放送を行う認可を得た。

 それと前後して、イギリスのピアソン社は中央テレビ局傘下のチャイナ・メディアと合弁会社を作って、中国3億5000万の世帯に教育と消費の番組を提供する契約を交わした。世界最大のメディアグループの一つである米バイアコム(Viacom Inc.)社が持つ世界最大の音楽番組MTV、有名な子供番組「Nickelodeon」も昨年末、中国で約200以上のテレビ局と契約し、既に番組を流している。また、全国的に成功している『時尚』、『追求』、『計算機網絡』などファッション性、専門性の強い雑誌に、バックには海外の同類雑誌が資本参加していることで知られている。

 国際大手メディアを巻き込んだメディア業界の激しい競争は、中国共産党が進んで導入したというより、経済の自由化にともなって突き上げられ、党指導部は事後の追認か黙認をせざるを得ないものだ。政府資金の大幅削減(大半のメディアは資金面ですでに独立経営)を背景に、読者・視聴者や広告の確保を目指して、メディア各社は市場原理に基づいて行動するようになっている。旧態依然の官製メディアは国民から敬遠され、経営不振ないし倒産に陥るものも少なくない。逆に、官製であっても中央テレビ局の「焦点訪談」は各種の社会問題を大胆でリアルに報道して人気番組となっている。朱鎔基首相が閣僚にこの番組を毎日見るよう薦め、一方、地方の指導者が自分の地域を取り上げられるのを恐れる、という話がよく知られている。

 同じ中央テレビ局の「ニュース30分」は昨年9月、南京の老舗食品メーカー「冠生園」が前年の原料を使って月餅を加工した事実を暴露し、それによって、その企業は国民の怒りを受けて倒産し、同時に、食品安全に対する国民全般と官庁の意識は一気に高まった。

 近頃、「南方週末」と「経済観察報」などの各紙が特に人気を博している。前者のある編集者が、深層的な社会問題を次々とスクープしたことで、上層部の圧力で解任されたが、報道姿勢は貫かれ、発行部数も増えている。昨年4月に創刊した後者は、「理性ある批判精神の編集方針」を掲げて、今年初めに既に10万部に読者を伸ばしている。

 中国のマスコミは、党の方針や中央政府への批判を許されていないなど、構造的な問題は依然多い。しかし市場化への歩みはもはや止まることはない。特に、中央政府の監督が厳しい全国紙より、地方紙、専門紙の「自由化」がより進んでいる。それが社会の民主化にどのように作用するか、中国のメディアの改革を見守っていきたい。

2002年9月6日
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