今年は安心して食べられますね」。春節に次ぐ国民的な祭日、中秋節の9月21日を北京で過ごしたが、市民の間では、伝統の月餅(げっぺい)が一番の話題だった。
ちょうど1年前、南京の老舗(しにせ)「冠生園」が前年の使い残しの原料で月餅を作ったことが中央テレビ局のニュース番組で暴露され、国民の不信と怒りを買った。月餅一般が国民から敬遠され、昨年の販売高は平年の6割にダウン、その老舗も倒産に追い込まれた。
月餅メーカー各社は信用回復のために、品質管理の強化、情報の公開など努力を重ねた。全生産過程をガラス張りで見学できるように工夫する企業も現れた。そのかいあって、消費者の信頼はほぼ回復し、消費量も平年並みに戻った。
ただ、信用のあるメーカーのものを選択する傾向が強まり、同時に、賞味期限や品質検査合格証がついているかどうかなどを消費者は厳しくチェックするようになった。
残留農薬や添加物、加工衛生などの食品安全問題はまさに国民的関心事。政府も減農薬・減化学肥料の無公害食品プロジェクトや有機生産を本格的に実施するようになった。抜き打ち検査で不合格の産地名と商品名を毎週公表している。情報を提供し、消費者の厳しい選択を通して、生産、加工の安全水準を高めようとする狙いだ。
中国人はもともと食品の安全と健康について関心が高い。薬膳(やくぜん)をしたり、料理素材の組み合わせを重視したりする。80年代からの食糧増産で中国人の主食はトウモロコシや雑穀からコメや小麦粉へ変わった(白色革命)が、その後も主食の約2割は雑穀が占めている。健康によいと考えられているからだ。雑豆や粟(あわ)の多くは山間地域で生産され、大部分は化学肥料や農薬をあまり使っていないので、グリーン食品とPRされ、コメよりも高く売られている。
中国の農産物・食品の生産、加工、流通や検査・監督面ではまだ多くの問題がある。しかし、今年の月餅の品質変化が示唆するように、中国国民の消費者意識は日本と同じかそれ以上に向上し始めている。