今月初め、中国各地は新型肺炎SARSの再発に備えて臨戦態勢に入った。
多数の感染者、死者を出したSARSの傷跡は中国人の心のなかでいまも深い。なんとか抑え込んだが、発生源はまだ特定できず、迅速な診断法や効果的な治療薬も研究開発の途上にある。ウイルスが活発化する冬に再流行するのではないかと、心配が募る。
SARSは中国各地で流行するインフルエンザの初期症状と酷似し、診断が難しい。予防策として中国はインフルエンザのワクチン接種を重視する。北京では10月半ばまでに70万人がワクチン接種を受け、11月末までには150万人に増やす計画だ。
SARS流行の教訓の一つは、防波堤であるはずの病院が逆に感染拡大の温床になったことだ。受け付け段階でのきちんとした対応が欠けた。衛生省は、予防と診療のマニュアルを作り、全国の医療関係者約100万人がその研修を受けた。同省はさらにインターネットを通して末端の感染情報を素早く通報させる疫病直接報告システムを全国1万800の国立病院、8千の郷鎮医院に構築した。
北京市内66の病院は今月から感染の疑いがある患者を鑑別診断する専門コーナーを設けた。SARSが横行した4月、わずか1週間の突貫工事で建てられた小湯山SARS専門病院も修繕工事が終わり、冬場に向けていつでも再使用ができるように準備を整えた。
SARS流行が残した最大の教訓は、情報開示の重要性だった。北京の病院の対応が遅れ、民衆の批判を浴びた最大の原因も初期段階での情報開示がなかったことだ。それをきっかけに、国民の間に「知る権利」を求める声が一層強まった。胡錦涛指導部は情報公開にも取り組み始めた。情報公開の責任と義務を初めて法律の形で定める「政府情報公開条例」が9月初めに起草され、年末に実行される予定だ。国務院新聞弁公室(国務院広報室)はすでに9月末、政府内66部署に所属するスポークスマン100人を対象に、突発事件への対応、マスコミへの説明などの研修を実施している。
こうした予防態勢をとっているため、今冬に向けて小範囲の発生があるとしても、今年春先のような大流行はないだろうと、中国予防医学の第一人者、鐘南山医師は見ている。中国の誰しもが、予測が当たることを祈っている。
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筆者の略歴:湖南省生まれ。 上海外語大から新華社記者。95年上智大修士課程修了。専門は農業を中心とした中国経済。目と足での調査に主眼を置おく。